一つだけ空き部屋にしている理由 2/3

和室

 

そこは、ちょうど道のカーブに当たる所で、

反対側は沢に下る急な坂。

 

その反対側は、

崖を覆ったコンクリートの壁しかなく、

 

その壁の上も畑しかありません。

 

そんな所に車を止めて、

一体何をしているのだろう?

 

何か異常な事態が、

どこかであったのだろうか?

 

そんな不安を感じ、

目が冴えてきました。

 

そこで起き出し再び窓に目をやると、

 

やはりライトに照らし出されたように

明るいままでしたが、

 

よくよく見ると車のライトなどではなく、

何か不思議な青っぽい光でした。

 

今ならLEDと思うでしょうが、

あの時代にそんな物などあるはずもなく、

 

車のライトは白っぽい黄色の光ばかりです。

 

そして、そこに映る影も、

木の影などではありませんでした。

 

何故なら、

 

光は止まっているのに、

影だけがこちらに近づいてくるからです。

 

風に揺れる事はあっても、

動くはずがありません。

 

そして、それはだんだんと、

人の形をしているように見えました。

 

僕はこの時になって、

初めて恐怖を感じ始めていました。

 

子供心に、

 

これは非常にマズイ事が起こっていると

感じたのでしょう。

 

慌てて部屋から逃げ出しました。

 

そして、

両親の元に駆け込みました。

 

両親は寝ていましたが、

僕が入ってきた事で目を覚ましました。

 

母が、「何かあったの?」

と心配そうに訊いてきました。

 

僕は今さっき起こった事を言いかけ、

 

「なんでもない・・・

一人で寝てるのが寂しくなった」

 

とだけ言いました。

 

もしここで騒げば、

 

せっかく手に入れた自分の部屋を

取り上げられるかと思ったからです。

 

父は呆れた風に、

 

「ユウスケもまだまだ子供だな」と笑い、

布団に入れてくれました。

 

母は全然信じていないようで、

心配そうに僕を見つめていましたが、

 

それを無視して、

父にしがみ付きながら眠りました。

 

その晩以降、

また何もない日々が過ぎ、

 

初めは怖かったのですが

何も起こらないままだったので、

 

僕も忘れ始めていました。

 

そして、

また村で人が亡くなったのです。

 

今度は近所のおじさんで、

 

僕がもっと小さい頃は、

よく遊んでくれていました。

 

病気で入院してそのまま回復せずに

亡くなったとの事でした。

 

そして、

お葬式からしばらく経ったある日の晩、

 

とうとうそれは起こりました。

 

今度も何か物音を聞いたような気がして、

夜中に目が覚めました。

 

しかしその日は、

 

友人と昼間に裏山で遊び回っていたせいで

起きるのが遅れてしまい、

 

窓を見ると前よりも影はハッキリと、

人の形をしてカーテンに映っていました。

 

僕はまた逃げ出そうとしましたが、

その影がもう窓のすぐ外にいるらしく、

 

鈴を鳴らしながら歩いている人の影は

今にも部屋に入ってきそうで、

 

怖くて動けなくなりました。

 

鈴の音もハッキリと聞こえます。

 

そして、とうとう『ソレ』は、

部屋に入ってきました。

 

その影が部屋に入った瞬間、

 

カーテンを照らし出していた光も

部屋の中に入り、

 

部屋の中に僕も包んだ形で、

丸い光のトンネルを作ったのです。

 

その中を亡くなったはずのおじさんが、

鈴を鳴らしながら入ってきたのです。

 

そして、

目が合ってしまいました。

 

「よう、ゆうぼう。

久しぶりだな・・・」

 

おじさんはそう言ってきましたが、

その目は虚ろで生気など無く、

 

肌の色も不気味なほど白いせいで、

 

光の中では青白く、

異常に恐ろしく見えました。

 

僕はビビりあがってしまい、

 

何も言えないまま、

おじさんを見つめていました。

 

「何だ、そんな怖い顔をして。

 

いつもおじさんには元気に

挨拶していたじゃないか?

 

何かあったのか?」

 

と訊いてきました。

 

死にそうなほど怖いのですが、

 

害を与えられそうもないので

なんとか声を絞り出し、

 

「こんばんわ」

 

とだけ答えました。

 

今思い出しても間抜けな受け答えでしたが、

それが精一杯でした。

 

「ゆうぼう、

おばさんを知らないか?

 

おばさんを捜したんだけど、

見つからないんだ・・・」

 

おばさんとはおじさんの奥さんで、

 

後から聞いた話だと、

その晩は親戚の家に行っていたそうです。

 

僕は当然そんな事を

知るはずもありませんから、

 

首を左右に振りました。

 

「そうか・・・知らないか・・・」

 

おじさんは視点の定まらない目でそう答え、

しばらく考え込んでいましたが、

 

何か良い事を思い付いたように、

とても嬉しそうな笑顔になりました。

 

その笑顔は本当に嬉しそうですが、

僕にはとてつもなく恐ろしい笑顔に見えました。

 

全身の感覚が麻痺するような恐怖です。

 

そして、

おじさんは言いました。

 

「ゆうぼう、ゆうぼうと一緒に行こう。

そうだ、それが良い」

 

クスクスと笑いながら、

僕に近寄ってきました。

 

僕は涙と鼻水でグチャグチャでしたが、

どうする事もできず、

 

おじさんに腕を掴まれるまで

動けませんでした。

 

しかし、

おじさんが腕を掴んだ瞬間、

 

全身の細胞が悲鳴をあげるような、

電気が駆け巡るような激しいショックが走り、

 

とっさに腕を振り解き、

勉強机の方へ這って逃げました。

 

おじさんは少し意外そうな顔をしながら、

 

「どうした?ゆうぼう?

 

良い所に連れて行ってやると

言ってるのに?」

 

おじさんはそう言いながら、

笑顔のまま僕に近づいてきます。

 

僕はこの状況から逃げ出す為、

頭をフル回転させていましたが、

 

パニックも起こしていたので

考えが中々まとまりませんでした。

 

廊下に逃げるには、

おじさんの横を通り抜けるしかありませんが、

 

とてもそんな事など出来ません。

 

おじさんはどんどん近づいてきます。

 

もうダメかと思った時、

ようやく母親の話を思い出しました。

 

(続く)一つだけ空き部屋にしている理由 3/3

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