一つだけ空き部屋にしている理由 3/3

和室

 

あのお守りは、あの日以降、

机の引き出しに入れたままのはず・・・

 

その事を思い出し、

とっさにお守りを取り出しましたが、

 

おじさんに肩を掴まれてしまいました。

 

また全身にショックが走り、

気が遠くなり始めた時、

 

廊下の襖が開きました。

 

そこに立っていたのは母でした。

 

母は僕に渡したのと同じお守りを持っていて、

おじさんに向かって怒鳴りました。

 

「その子を連れて行く事は、

私が許しません!!」

 

そしてお経を唱えながら、

僕とおじさんに近づいてきました。

 

おじさんはお守りを怖がるかのように後退り、

僕から離れていきました。

 

「あなたが行く所はあちらです!

一人でお行きなさい!!」

 

そう怒鳴ると、

再びお経を唱え始めました。

 

「そんなに怒らなくても・・・」

 

おじさんは悲しそうにそう言い残すと、

 

トンネルが続く廊下の方へ

歩き出しました。

 

そして壁に消えかけた時、

廊下で悲鳴があがりました。

 

兄と姉の声です。

 

母は一瞬お経を唱えるのを止めましたが、

 

その時におじさんの動きも止まったので、

再びお経を唱え続けました。

 

おじさんが完全に壁の中に消え、

光のトンネルが消えると、

 

やっとお経を唱えるのを止め、

力尽きたようにその場に座り込みました。

 

冬の夜中なのに汗でびっしょりで、

体中からは湯気が立っていました。

 

しかし、兄と姉が、

 

「今の何だったの?

人が壁に!!」

 

と言いながら僕の部屋に入ってくると、

 

母は急に立ち上がり、

僕達を抱えて泣き始めてしまいました。

 

僕も大泣きです。

 

兄と姉は、困ったような顔を

していたんだと思います。

 

その騒ぎで、

ようやく父が起き出してきました。

 

「あなた!

やはりこの部屋は良くありません!

 

ユウスケも連れて行かれそうに

なりました!」

 

そう母が訴えかけると、

 

父は困った顔をして

黙り込んでしまいました。

 

「あなた、

まだ私の言う事を信じられませんか?

 

私が病気だと思っているのですか?」

 

母は必死になって訴えかけましたが、

やはり父は困った顔をしたままです。

 

「これでもまだ信じられませんか?」

 

そう言うと、

 

母は僕のパジャマの上着を脱がし、

父に腕と肩を見せました。

 

その時になって初めて

僕も気が付いたのですが、

 

おじさんに掴まれた腕と肩の部分が、

手の形に青アザになっていたのです。

 

「まさか・・・」

 

父はそう言うと、

その場に座り込んでしまいました。

 

兄や姉も覗き込んで怖がっていました。

 

「じゃあ、お前の言っていた事は

本当だったのか・・・」

 

そう言ったきり、

惚けたようになってしまいました。

 

母はそんな父に近寄り、

 

「何度も言ったでしょ?

ここは霊道なんです。

 

本当に何とかしないと、

この部屋は危険なんです」

 

霊道と言われても、

 

僕も兄も姉も、

何がなんだか分りませんでしたが、

 

父は何度も頷いていました。

 

次の日から、

父の動きは素早いものでした。

 

村の最年長のお年寄りの所へ

相談しに行き、

 

僧侶を紹介してもらっては

車で迎えに行って、

 

早速部屋を見てもらいました。

 

そして、お坊さんの助言で

庭にお堂を建てたのですが、

 

それがかなり変わっていました。

 

普通なら仏像が入る場所には何もなく、

 

両側の壁に御札を仕舞う

スリットのようなものが付いていて、

 

正面の扉と反対側にも、

正面と同じような扉がありました。

 

まるで、

 

前からも後ろからも出入りが出来る

エレベーターのようなお堂です。

 

そして、

 

お堂から何か変わった模様を

彫り込んだ石を、

 

道しるべのように家を迂回する

ルートの地面に埋め込み、

 

家の裏側にも同じようなお堂を建てました。

 

「これで、

霊魂は家を迂回して通るようになる。

 

もう安心じゃよ」

 

と言われました。

 

確かにそれ以降、

何も起こりませんでした。

 

村の誰かが亡くなり何日かの間、

 

夜は家族全員で、

僕の部屋で見張るように眠りました。

 

つまり、試してみたわけですが、

父以外の家族は全員嫌がりました。

 

しかし、お堂や僧侶の「お祓い料」に

相当金を使ったらしく、

 

「効果があるか試さないと

納得がいかない!」

 

と父は言い張って、

無理矢理に付き合わされたという事です。

 

実に父らしいのですが・・・

 

しかし、やはりと言うべきか、

その部屋は空き部屋になってしまいました。

 

僕はもう二度とあんな目には

遭いたくなかったからです。

 

仕方なく父は物置を取り壊し、

そこに離れを建て、

 

そこがちょうど高校生になっていた

兄の部屋になり、

 

兄の部屋が僕の部屋になりました。

 

そして2階の角部屋は、

見事に物置となりました。

 

父は何かにつけてブーブー言っていましたが、

 

他の家族全員がそう主張したので、

父も折れるしかなかったようです。

 

母が嫁いで来た当時、

 

それに併せて家を建て替え、

あの角部屋は夫婦の寝室だったそうです。

 

しかし、

 

霊感の強かった母は、

霊が通るたびに眠れない夜を過ごし、

 

軽いノイローゼになり始めていたので、

下の部屋に移ったのだそうです。

 

そして、

 

僕の体に付いていたアザと同じものが、

母にも付いていた事があるそうです。

 

その時は母が自分で付けたのだとばかり

思い込んでいた父ですが、

 

僕の体にも付いているのを見て、

 

兄や姉も目撃した事から、

とうとう父も認めたのでした。

 

結局、物置の為にお堂を二つも造り、

お祓い料や毎年の御札の代金・・・

 

それに、

 

2年に一度はお経をあげてもらう為に

車で迎えに行く事になり、

 

父には気の毒な事をしたと、

今では思います。

 

僕が遭遇したおじさんの霊は、

長い入院で心が少し病んでしまい、

 

寂しさで誰かを連れて行こうとした

『タチの悪い霊』だったようで、

 

ほとんどはただ通り過ぎるだけ、

と母が話してくれました。

 

しかし、

 

事故死や自殺者の霊は本当に怖い・・・

と母は言います。

 

誰かれ構わずに、

道連れを作りたがるのだそうで・・・

 

今でも僕の実家では、

両親と兄夫婦が住んでいますが、

 

2階の角部屋は物置のままだし、

お堂も設置されたままです。

 

もしあなたも霊道に遭遇してしまったら、

とにかく逃げ出して下さい。

 

霊道を通る霊は、

霊道の中から出られないそうですから・・・

 

間違っても霊の進む方には

逃げないようにして下さい。

 

(終)

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