実家の裏にある不気味な一軒の小屋

小屋

 

僕が子供の頃の話です。

 

当時、僕の実家の裏側には、

手入れのされていない土地があった。

 

これが結構広いのですが、

 

その奥は小さな雑木林のような所に

繋がっていて、

 

ちょうどその境目あたりに

トタン壁の小さな小屋があった。

 

夜になるとそこは暗く不気味で、

 

子供の僕にも危ない所なんだと

いうことだけは分かっていました。

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意外な小屋の正体とは、そして・・・

それでもその土地の3分の1くらいは

実はウチの土地だったので、

 

(荒れ放題で土地の境目などは

分からなかったのですが・・・)

 

おばあちゃんが赤カブなどの野菜を

育てていたみたいですが、

 

なぜか土地を手入れしようとは

しませんでした。

 

そして僕が小学校高学年の頃、

 

その日は記録的な大雪で、

町中が真っ白になりました。

 

そのせいで、あの土地の怖さも

薄れて見えたのかも知れません。

 

僕は一人でその土地で

雪だるまを作って遊んでいました。

 

空は一面灰色で、

 

雪が降り積もる音さえ聞こえてきそうな

静寂の中、

 

ふと雑木林に目をやると、

木の上にしか雪が積もっていないそこは、

 

巨大なカマクラのようにぽっかりと、

暗闇が口を開いていました。

 

そこでふと、

 

小屋に何か遊び道具があるかも知れない・・・

と思い、

 

普段の不気味さも忘れ、

その小屋へ忍び込んだのです。

 

実際に近くで見ると、

その小屋はさらにボロく、

 

入り口にはトタンの板が立てかけて

あるだけでした。

 

僕は小柄だったので、

隙間から難なく滑り込めたのですが、

 

同時に雪がどさっと落ちるような音がして、

 

急にその小屋の普段の不気味さを

思い出してしまいました。

 

そうなると怖いもの見たさで

冷静に周りを見渡してしまうもので、

 

『その小屋が実は民家だった』

 

ということに気づくのに、

そう時間はかかりませんでした。

 

小さい小屋だと思っていたのは、

家の後部が雑木林で隠れていたためで、

 

さらに家の周りに針金や木材で

トタンの板が固定されていて、

 

小屋のように見えているものでした。

 

(とういうより、家を隠している?)

 

入り口の引き戸は外され、

長い廊下の奥まで見渡せるようでしたが、

 

僕は直感的に見てはいけないような気がして、

ずっと俯いていました。

 

しかし、

目の端で見つけてしまったのです。

 

玄関に転がる濡れたサンダルを・・・

 

そして動揺した目線のまま、

つい廊下の奥、

 

突き当りの広間を見てしまいました。

 

開け放たれた襖。

 

先代の家主の写真らしきものが

壁に沢山立てかけられ、

 

床には何か黒い紙のようなものが散乱し、

部屋の中央には黒い巨大な仏壇が置かれ、

 

そしてそれにもたれかかって

手で位牌を摩っている、

 

頭から薄い布団を被った老婆。

 

それに気づいた瞬間、

 

「さだしにたか!!」

 

と老婆は叫び、

同時にガチャーンと何か音がしたかと思うと、

 

玄関に続く廊下を素早いすり足で

僕の方に迫ってきました。

 

それからどうやって家に逃げ帰ったのか、

今でも覚えていません。

 

でも確かにその時、

命の危険を感じたのです。

 

今、僕は都内で大学生をしているのですが、

あの時の戦慄は薄れることがありません。

 

何より、

あの時の老婆の叫び声・・・

 

物凄い形相で叫んでいたのですが、

 

声が甲高かったせいで、

上手く聞き取れなかったように思います。

 

「さがしにきたか!!」

 

だったような気もするのですが、

 

どうも、「さだしにたか!!」

のような気がして・・・

 

その小屋(民家)は、

今でも実家の裏にあります。

 

(終)

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