廃れた田舎に伝わる怨姫の呪い 1/3

 

俺の祖母が亡くなった。

 

いや、むしろ母親と言っても

相違ないだろう。

 

俺の両親は、

俺を生んですぐに蒸発した。

 

結局真相は解明されず、

 

マスコミは死亡をほのめかしたものの、

死体は発見されていない。

 

だから俺の世話は全て

祖父母に任せられ、

 

しかし嫌な顔ひとつもせず、

俺をここまで育ててくれた。

 

だから俺は

祖母の死を知らされた時、

 

大きな喪失感に包まれた。

 

と同時に、

妙な疑念が湧いた。

 

なぜなら、

 

祖母の死に様がこの世のものとは

思えないほど、

 

異常だったからだ。

 

俺は葬式の為、

故郷に帰ることになり、

 

バスと電車を経由し、

 

最後はタクシーに乗って

帰路を進んでいた。

 

タクシーの運転手は

俺が喪服を着て、

 

しかも廃れた田舎村に

行こうというのだから、

 

興味をそそられたらしい。

 

「あれ、お客さん。

もしかしてA村の出身者ですかい?」

 

「え、あ、はい。でも何で・・・」

 

「実は私もA村の出身者でね、

雰囲気で分かるんですわ」

 

見れば、

 

彼は40歳半ばの

少し痩せ気味で、

 

何か他とは違う雰囲気を

纏った人だった。

 

そして何より印象的なのは、

右目につけた眼帯だった。

 

「あぁ、この眼帯ですか。

ちょっとした事故でね。

 

ところで、

 

野暮なことを聞くようですが、

お葬式ですかい?」

 

「えぇ、祖母が・・・」

 

そうして、

俺は聞いてみることにした。

 

もしかしたら、

何か知っているかもしれない。

 

「・・・祖母の死に様が酷いんです。

聞いてくれますか?」

 

「なぜ私に話すんです?」

 

「何か、引っ掛かるんです。

地元の人なら何か分かるかと思って」

 

しかし、彼は強い口調で、

 

「私は何も分かりませんよ。

 

検死官でもないし、何せ、

死体を一回も見たことないんです。

 

それに、分からない方が

いいこともある」

 

俺は余計に気になってしまい、

更に問いただそうと思ったが、

 

「着きましたぜ」

 

どうやらかなりの時間が

経っていたようだ。

 

「これも何かの縁だ、

これは私の名刺です。

 

何かありましたら、

相談くらいには乗りますよ」

 

この名刺が俺の命綱になろうとは、

思いもしなかった。

 

俺の故郷であるこの村は、

山奥の中の山奥、

 

同じ県内の住人でも知らない人が

大半を占めるほどの廃れた村で、

 

ついに人口は二桁に突入した。

 

葬式を行うような施設は無く、

親類の家が会場となっていた。

 

祖父母の家で行われた葬式には、

村中から人が集まっていた。

 

俺は門前で挨拶をしていたのだが、

正直、誰も覚えていない。

 

まともに挨拶は出来て

いなかっただろう。

 

俺はずっと顔を伏せ、

立ち尽くしていた。

 

人にはお辞儀をしているようにも

見えたのかも知れない。

 

涙を堪えきれず顔を伏せている、

と思った人もいるだろう。

 

だが、どれも違った。

 

俺は恐怖に怯えていたのだ。

 

なぜなら・・・

 

来る人すべての右目に、

眼帯がしてあったからだ。

 

恐怖に足は震え、

 

Yシャツと体は

冷や汗で密着していた。

 

俺だけが除け者にされている

ような孤独感を、

 

葬式中ずっと味わい続けていた。

 

恐怖を拭えないまま、

 

葬式の後片付けを終わらせ、

俺は祖母の部屋に立ち寄った。

 

不思議と恐怖が薄らぐ感じがした。

 

祖母が大事にしていた

演歌歌手のサイン色紙や、

 

プロポーズに祖父から貰った

指輪などの遺物は、

 

そのまま残されていた。

 

懐かしい母の香りに包まれた部屋で、

俺は人知れず涙をこぼしていた。

 

ふと、タンスと本棚の間に、

ノートが挟まっているのが見えた。

 

気になって俺がノートを

手に取ったその時、

 

「やめろ!」

 

と大きな声を出して、

祖父が勢いよくやって来た。

 

俺が都会に自立する時には

既に見えなくなっていた、

 

両目を大きく見開いて・・・。

 

「それを見るんじゃない!

まさか、もう見てしまったのか!?」

 

俺の肩を、

 

両手で爪がめり込むほど

強く握り、

 

充血し過ぎている赤い目で

鋭く睨みながら、

 

俺に叫んで来たのだ。

 

しかし、ふと我に返り、

 

「・・・すまん、

儂はどうかしていたな。

 

許してくれ。

 

・・・もう一度聞くが、

そのノートを読んだのか?」

 

「・・・いや、

読んでないよ」

 

「・・・そうか、

・・・ならいいんだ。

 

このノートは儂が預かっておこう。

 

お前はどうする?

泊まっていくのか?」

 

「・・・いや、

タクシー呼んで帰るよ。

 

仕事も今は佳境だしね」

 

「そうか。

 

すまなかったな、

儂はもう寝るよ。

 

たまには元気な顔を見せに

来るんだぞ」

 

そのまま、

 

祖父は両目を閉じた状態で

去っていった。

 

どっと疲れが吹き出て、

畳に崩れ落ちた。

 

本当は泊まろうと思っていた。

 

しかし、孤独感を味わい、

今も恐怖に震わされている。

 

とても泊まる気分にはなれなかった。

 

そしてあの赤い目・・・

 

今もずっとあの目に睨まれている、

そんな気がした。

 

今すぐ帰ろうと思い、

 

部屋を飛び出そうと

足を踏み出すと、

 

何かをクシャッと踏んでしまった。

 

(続く)廃れた田舎に伝わる怨姫の呪い 2/3へ

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