失くしても帰ってくるガーネットの指輪
私の学生時代からの友人Aは、仕事柄旅行する機会が多い。
私たちの共通の知人で、占いと天然石のアクセサリーの店をやっている人が、Aの旅の御守りとしてガーネットの指輪を見立ててくれたのが5年前。
この指輪を着けるようになってから、Aはすれすれで危険を回避するようになった。(間一髪で水害や土砂崩れを免れたとか、乗りそびれた船が座礁したとか)
ネックレスにしなくて良かったね
他人の不運によく巻き込まれるAにとって、この御守りはかなり優秀だと思う。
しかも不思議なことに、紛失してもすぐ帰ってくる。
盗まれてもすぐ帰ってくる。
大抵は犯人を病院送りにする形で、何度も何度も帰ってくる。
そして今回はまた、特に派手な騒ぎを起こして帰ってきた。
ある日、私の勤め先の救急病院に、指を怪我した女性が運ばれてきた。
車の後部に荷物を積み込んでいる最中、指輪がどこかの金具に引っかかってしまい、間の悪いことに荷物を積み終えたと勘違いした女性の母親が車を急発進させてしまった。
そのせいで、女性は全体重を指輪にかけた状態で車に引き摺られる格好になったそうだ。
それを聞いて納得。
彼女の指は、指輪部分から指先に向かって肉が引っ張り寄せられて骨が露出していた。
ちょうど生の鶏肉チューリップみたいになっていたから・・・。
処置のためにカッターで切り離した指輪は原型をとどめないくらい変形していたが、知人のオリジナルデザインを示す刻印とAのイニシャルが残っており、見覚えのある大粒のガーネットが血液よりも鮮やかな色彩を放っていた。
数日前、Aが御守り指輪を紛失したと聞いていた私は、Aと警察にすぐさま連絡。
駆け付けたAが言うには、指を怪我した女性はAのママ友のひとりで、警察によれば女性の車の荷物は近所のショッピングセンターから大量に万引きされた食料品とその他だったらしい。
要するに、女性はAから盗んだ指輪を身に着けて大量万引きしたところ、車で逃げる際に指輪が元で大怪我をして病院送りになり、悪事が露見したということだった。
今まではせいぜい指輪が抜けなくなって指が紫色に腫れ上がったり、急に金属アレルギーを起こして全身痒みで担ぎ込まれたくらい。
とうとう流血沙汰になるとは、段々とエスカレートしているのが心配。
ガーネットを見立ててくれた知人に連絡したところ、「ネックレスにしなくて良かったね~♪」と。
突っ込みどころはそこですか?と思わず・・・。
今ではA自身もガーネットに対して恐れを抱いているので、警察から帰ってきたらお祓いなりなんなりするらしいけれど、もう指輪にはしないということでAの心は固まった模様。
(終)
罪人の血と肉がついた~…と思うとそのガーネット自体禍々しいなぁ。
事故が多いのも、所有者以外の血を求めてるんじゃないだろな。