貴様等、呪ってやる!!!

キャンプ

 

俺がまだ小学生の頃、4家族20人程で河原へキャンプに行った。

 

真夏とは言え、河原遊びをしていれば涼しくなり、バーベキューやら何やらして楽しく過ごし、すっかり暗くなった。

 

夏の夜と言えば恒例の怪談が始まり、大人も子供も混じって笑ったり怖がったり。

 

小学生だった俺は肝を冷やしまくりながら話を聞いていた。

 

夜も更けて来た頃、今までニコニコしながら聞いていたUさんがぽつりと話し始めた。

 

「怖いけど考えさせられる話。タイトルはそうだね~『言葉の力』ってところかな」

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言葉の力

ある中学にクラスのリーダー格のいじめっ子のAと、目立たないいじめられっ子のBがいた。

 

オタクっぽく気持ち悪いというだけで、Aの標的になったB。

 

Aと仲の良い数人での小学生並のイタズラが始まる。

 

最初は消しゴムをちぎって投げたり、上履きを隠したりする程度だった。

 

ある日、A達のいじめにキレたBがAを殴った。

 

しかし、これがマズかった。

 

よろけたAが女子にぶつかり転けた。

 

Aと女子の二人共が手の骨を骨折。

 

この件からBは完全に孤立。

 

いじめはヒートアップし、地獄の日々が始まった。

 

肉体的にも精神的にも暴力や恐喝と、ありとあらゆるいじめを受けた。

 

Bは人間の一番醜い部分を見た。

 

Bは次第にやつれていく。

 

・・・と言うより、生気が抜けてきていた。

 

半月程が経ったある日の授業中、いつもの様に後ろから何か飛んできたり、机の下から蹴られたりしていた。

 

するとBは突然立ち上がり、奇声をあげてこう言った。

 

「貴様等、呪ってやる!!!」

 

そして、そのまま教室から出て行った。

 

クラス内は爆笑し、誰もBの言葉をまともに受け止めなかった。

 

しかし、その夜から異変が起こった。

 

Aは夢を見た。

 

無数に道がある。

 

その道は、進む先が繋がって広場のようになっている。

 

そこに見覚えのある誰かが立っている。

 

そこで目が覚めた。

 

Aは「変な夢・・・」程度に考えて、特に気にしなかった。

 

学校もいつも通り。

 

違うのは、Bが来ていないくらいだった。

 

休み時間にクラスの数人が集まって夢の話をしているのが聞こえてくる。

 

「いっぱい道があって広場に誰か立ってるだけなんだよね~」

 

Aはちょっとビックリした。

 

話を聞くと、クラスで数人が同じ夢を見たらしい。

 

「なんだか気持ち悪いね~」とか、「俺達繋がってる?」と、軽い気持ちでいた。

 

Aはその日も夢を見た。

 

昨日と同じ夢。

 

・・・いや、ちょっと違う。

 

広場に立っている”誰か”がBだったのが分かる。

 

起きたAは、「なんだか気持ち悪いなぁ・・・」と思いながら学校へ行った。

 

そして学校で夢の話をすると、同じ夢を見た人がいる。

 

しかも、昨日より増えている。

 

変だ。

 

クラス中でも話題になり始め、「Bの呪いだ!」と言い始める奴も出始めた。

 

Aは、「そんなわけねぇよ!Bなら夢の中だろうとボコボコにしてやるよ!」と、余裕ぶってみた。

 

しかし一週間が経った頃、クラスの半数が同じ夢を見るようになっていた。

 

夢の中のBは徐々に近くに来ている。

 

さすがに気持ち悪くなったAは、数人の有志と共にBの自宅へ電話した。

 

電話に出たのはBの母親だった。

 

「Aと申しますが、B君最近学校来てないですけど具合でも悪いんですか?」

 

取り巻きが後ろでクスクスと笑っている。

 

「あぁ、あなたがA君?Bが仲良くしてもらってる見たいでありがとうね。あなたの話題ばかりよ。あなたなら言ってもいいかしら」

 

「えっ?何かあったんですか?」

 

気持ち悪かった。

 

Bは親に何と言っていたのか気になったが、話を聞いた。

 

どうも一週間前から家に帰って来ていないらしく、捜索願いも出しているが見つからない。

 

学校の友達に心配させないようにと、行方不明なのを学校には伏せてもらいっているという事だった。

 

電話をかけた夜、Aは夢を見た。

 

遂にBが目の前にいる。

 

いつもならこの辺で目が覚めるはずだったが、様子が違う。

 

夢の中のBは、ゆっくりとAの首に手をかける。

 

Aの首が締まり、次第に苦しくなってくる。

 

夢の中なのに苦しい。

 

体は動かない。

 

「夢なら覚めろ・・夢なら覚めろ・・夢なら覚めろ・・夢なら・・・」

 

意識が無くなったところで目が覚めた。

 

異常な夢と寝汗にゾッとしたが、「夢か・・・」と安心した。

 

顔を洗いに洗面所へ行こうとした時、母親が変な事を言う。

 

「首、アザ?」

 

血の気か引くのが分かる。

 

鏡で確認すると、薄っすら首にアザがある。

 

胃から込み上げるものを感じたが、朝飯を詰め込み学校へ。

 

朝のホームルームが終わると、全校集会があるという事だった。

 

集会の内容は、Bが近くの山で自殺しているのが見つかった、という。

 

集会が終わりクラスに戻ると、Bの話題で持ちきりに。

 

ただ泣いている奴、謝る奴、笑う奴。

 

Aはクラスで夢の話をした。

 

「俺、夢の中でBに首絞められた。みんなは?」

 

Bを直接いじめた数人だけが夢の中で首を絞められたようで、それ以外の奴らの夢は、あり得ない程に首をガクガクさせ、涙やヨダレ、鼻水を垂れ流しながら笑うBがいたというものだった。

 

クラスは阿鼻叫喚と表現出来る状態になった。

 

※阿鼻叫喚(あびきょうかん)

 悲惨な状態に陥り救いを求める様子。

 

先生が、「今日はB君の葬式があるので家に帰って準備をしなさい。B君のご両親からクラスのみんなに来て欲しいとの事だ」と。

 

そして夕方みんなで集まり、誰もが怯えていた。

 

もし遺書があって、そこには名前が書かれていて、それを読んだBの親に何かされるのではないか。

 

そんな話をヒソヒソとしながら葬式会場へ。

 

葬式会場でBの親は憔悴しきっている様子だった。

 

Bの親は「来てくれてありがとうね」と、涙を流しながらクラス全員の一人一人に言って回っていた。

 

正直なところ、Aは拍子抜けしていた。

 

しかし、何かおかしい。

 

たまに小さくビクッとなる奴や、ヒッと声を出す奴がいる。

 

Aの前にBの親が来た。

 

泣きながら「ありがとう」と感謝の言葉。

 

隣の奴に移る瞬間、Bの親と目が合った。

 

「見つけた」

 

囁きが聞こえた。

 

血の気が引き、ビクッと反応するA。

 

焦るとかそんなレベルではない。

 

しかし、その後は何事もなく普通に葬儀が進み、B親の喪主の挨拶で、「皆さん来ていただいてありがとうございます。Bもよろこ・・・」・・・

 

ここでUさんが話を止め、集まっている家族の後ろに目線を移し、「あ」と一言だけ発した。

 

全員がUさんの目線を追う。

 

振り返った人達から、「ヒッ」と声が漏れたところで、Uさんの方から綺麗に手を叩く音。

 

パシーン!

 

「話はここでおしまい」

 

拍子抜けだったが、Uさんは続けてこう言った。

 

「どうだった?俺の「あ」っていう一文字の言葉だけで、みんなが振り返って体をビックリさせたりする事が出来た。これが言葉の力だよ。まぁ色々前提があったから出来たけど、みんなも”言葉”は気を付けて使ってね」と、子ども達を諭すように言った。

 

話が終わり、Uさんが「はい拍手~」と言うと、場の空気が明るくなった。

 

そして解散、就寝。

 

でも一つ気になることがあった。

 

解散した後、Uさんの表情が一瞬暗くなった。

 

それに、目も笑っていなかった。

 

(終)

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