娘が幸せになれると喜んで嫁に出したが・・・

線路

 

叔母が子供だった頃の体験話。

 

もう40~50年前になるが、当時は東北の山国で育っていた叔母の近所には、親子3人の家族がいた。

 

歳をとった両親と若い娘一人で、とても貧しかった。

 

働き詰めだった娘は、子供の時から自分の好きな事をしたことなんて一度もなかった。

 

そんな頃、叔母の両親の口利きで、隣町の裕福な家との縁談がまとまった。

 

娘の両親は、「これでやっとあの子も幸せになれる」と喜んで嫁に出した。

 

ところが、娘は嫁ぎ先でひどく苦労したらしい。

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こんな事になるなら・・・

嫁いだ娘は下女同然にこき使われ、『帰りたい』という手紙がよく届いた。

 

両親は、一度嫁いだからにはガマンするよう言い聞かせたようだが、ある夜ついに耐えられなくなった娘は、山を越えて実家に戻ろうとした。(隣町と言っても遠い)

 

山には鉄道が走っており、踏切なんて無い。

 

感情が高ぶっていたからなのか、我を忘れて走っていたせいか、娘は線路を渡る時に列車に巻き込まれて亡くなってしまった。

 

バラバラの肉片になり、誰だか分からない状態だったそうだ。

 

嫁ぎ先では、役立たずのうえ恩知らずと言われ、勝手に出て行った嫁になど葬式も出してくれなかった。

 

後には、半狂乱になった実の両親だけが残った。

 

娘の両親は、「こんな事になるなら帰って来いと言えばよかった・・・」と悔やんだ。

 

以来、母親は伏せがちに。

 

また父親は、「回収して骨にした娘の破片が足りない」と言っては、時間が出来るとザルを持って線路に行き、足りない娘の肉片を探していたという。

 

当時は小さかった叔母は、道でザルを持って線路に向かうその父親とよく会ったそうだ。

 

もちろん叔母には責任はないが、自分の家の口利きで成った結婚だったので、随分と後味の悪い思いが残ったということだった。

 

(終)

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