知られてはいけない地下室だった!?
これは、私が20代半ば頃まで働いていた工場での話。
場所は東北地方。
その工場には『地下室がある』という噂があり、実際に地下室と思われる入り口もあった。
しかし、工場長や社長に聞いても、「そんなものはない」と言い張る。
たまに政治家の方なども見学と言いつつやって来るが、いつの間にか居なくなっている。
名前は出せないが、有名な方も見学に来られていた。
得体の知れない恐怖
そんなある日のこと、同僚たち10人で「夜中に地下室へ潜入しよう」ということになり、実行した。
防犯セキュリティーが作動している通路や窓は知っていたので、セキュリティー担当の同僚に抜け道を作ってもらった。
その抜け道を使って潜入し、いよいよ地下室への入り口がある部屋の扉の前まで来た。
やや緊張しながら扉を開けると、知らない男性が部屋におり、工場には似つかわしくない背広を着て立っていた。
その男性は私たちを見るなり、社長に電話をかけている様子だったので、「マズイなぁ・・・」と思いながらも待っていた。
しばらくすると社長が工場にやって来て、「お前ら全員クビ。不法侵入に窃盗容疑で警察呼んでるから待っとれ!」と言われ、即日9人がクビになった。
クビを免れた1人は、セキュリティー担当兼ライン工の同僚。
その後は警察へ行き、言い訳も出来ず。
確かに、あの部屋には金庫もあったので社長の言い分は理解できるが、反応があまりに過剰すぎた為、クビになった9人の疑問は深くなる一方だった。
その後、私は半年ほどニートをしていたが、私たちと同じように潜入してクビになったという元同僚と居酒屋で偶然会った。
彼は私たちが失敗したのを見計らってから1週間後に潜入したそうで、地下室に入った方法は単純なものだった。
有給を取り、セキュリティー担当者が居ない時を狙って地下室へ潜入した時に、気づかれたのか足音が沢山したので近くにあった配管まみれの部屋に隠れて約1日を過ごし、足音がしなくなってから外に出てみると、時間帯が悪かったのか見張りのような人に見つかって連行されたという。
中の様子を詳しく聞くと、1本の長い通路と左右に沢山の部屋の扉のようなものがあり、その部屋の扉のようなものは壁と同じクリーム色でカムフラージュされていて、通路の突き当りにはまた見張りが居たそうだ。
そしてなぜか、この話を聞いた次の日、私はニートを理由に家を追い出された。
私に話したこの元同僚も、親から都会へ行けと言われて追い出されたそうで。
偶然かもしれないが、同じ日に追い出された事と、理由を話してくれない親という点、この2つが一致していることに得体の知れない怖さを感じた。
余談なるが、この工場は金属部品を製造していた。
そして、2010年頃の出来事。
(終)