焦げ臭い空気が漂うことのある会社
今勤めている会社に入社した当日、「何か焦げ臭くないですか?」と先輩方に聞いた。
しかし、「そんな焦げるようなものは無いけどなあ・・・」と、みんな首を傾げていた。
それ以降も、たまに焦げ臭い空気が漂うことがあった。
それは大抵朝の9時~10時頃か、昼下がりの14時~15時頃で、誰も居ないのに誰かが通ったかのように、ふわりと空気が動いた後が多かった。
その見えない誰かが通ると、ほのかに生暖かい風が吹き、焦げ臭いニオイが漂う。
俺があまりに焦げ臭い焦げ臭いと言うからか、ある時に同僚の一人が「それはどっちから臭ってくるの?」と聞いてきた。
聞かれた俺は、「こっち」と壁を指差した。
まさかそっちの方角の延長上に、それも300メートルも離れていない隣の山に『火葬場』があったとは・・・。
どうやらアパートだけでなく、職場も霊の通り道だった模様。
一人で仕事をしていると、廊下を挟んだ向かいの課長室の扉が開く音と、誰かが課長室に入る気配で顔を上げる。
だが、扉も開いていないし、誰も居ない。
課長室に入っていく気配はすれど、課長室から出てくる気配を感じたことが無いのは、課長室が火葬場と職場(自分の席)の延長だからだろうか。
それにしても、扉が開くことはあっても閉まる気配も音も無い。
それでも、必ず開ける音と気配しかしないというのは妙な話だ。
(終)