心霊スポットと言われる地下に行ってから 3/4
すると次は、流しの上の
観音開きの小さな戸棚から、
ドォン!!と、
激しい音が聞こえてきました。
なんやねんと思いつつも
その戸を開けてみると、
そこには30代後半くらいの
男性の顔があり、
じっとこちらを見ていました。
私もその男も、
じっと少し睨む様な感じで、
お互いの目を見ていました。
そして私はなんとなく、
「どうせなんか言うても
黙ってんねやろ」
と口を開き、
戸棚を閉じました。
その後、夕方まで特に何も起こらず、
少し睡眠をとったりした後、
当時勤めていた職場である
お店に向かいました。
そこでよく「この店は出る」
等と言っていた、
自称『霊感がすごい』大学生の
アルバイトの女性(Hさん)に、
昨晩泊まった心霊スポットについて
尋ねました。
私「Hさん、○○(心霊スポット)って
行った事あります?」
H「あるよぉ。あるけど
もう絶対行きたぁない!」
私「やばいんですか?」
H「やばいやばい、絶対やばい!
あそこ行くん!?」
私「行かないですけど、地下が
やばいとかって聞いたんですけど」
H「だって地下で死んでんやろ!?」
という風なやり取りをした後、
あそこはどういう場所か
知っているかと聞くと、
更正施設のような所で、
どうしようもない不良や、
知的障害の人等が収容されてた
とかなんとかと、
聞いた話で確信はないが、
という風な感じで教えてもらった。
これも有名な話らしかった。
私は少しだけ自分の考えと
繋がった気がして、
坊主頭の彼を思い出した。
仕事中、携帯電話は基本、
事務室に置いていたのですが、
アルバイトの従業員が
「なんかずっと鳴ってますよ」
と、私に報告してきました。
私はなんだろうと思い、
携帯の着信を確かめに
事務室に向かうと、
確かに携帯は、
まだ着信のバイブレーションで
震えていました。
先A『あ、つながった』
それは先輩Aからの着信で、
出てみると、
先A『なんか(友人)がずっとおかしいねん!
頼む、ちょっと来てくれ、頼む!!』
と、必死に懇願してきました。
その後ろから、叫び声が
ずうっと聞こえてきていました。
これはただ事ではないと思い、
オーナーに電話をかけ許可を取り、
他の従業員に「少し頼みます」
と事情を説明した後、
友人の家に向かいました。
友人も一人暮らしで、
先輩2人と先輩Aの彼女の3人は、
よくそこを溜まり場にしていました。
そしてその日も、
4人でその部屋に居た様でした。
あまり離れていなかったこともあり、
30分弱で友人宅に着きました。
部屋に入ってみると、
「あああああ!!」と、
ひっきりなしに叫んでいる友人と、
友人を抱えた先輩B、
泣きはらした顔の先輩Aの彼女、
飲ませようと思っているのか、
水の入ったコップを握りしめた先輩A、
知らないおばさん
(後で聞くと大家さんでした)
の5人がそこに居ました。
私は先輩Aに、
私「こいつ知らん所で
クスリでもやってたんか」
と、攻めるような口調で
尋ねました。
先A「そんな事するわけないやろ!!
とり憑かれたんちゃうんかこれ!?」
と、半ばパニックに
なったような感じで、
先A「なんとかなれへんのか!?」
と私に言いました。
そう言われても
どうしていいのか分からない私は、
とりあえず先輩Bに代わって
友人の肩を掴み、
私「(友人)、どないしたんや。
落ち着け」
と声をかけました。
しかし、友人は私の声など
聞こえていないようで、
叫び声を上げるだけでした。
以前、友人の姉が狐にとり憑かれた、
という話を聞いた事がありますが、
それも友人が心霊現象が苦手な要因に
なっている事もあるのだろうと、
私「大丈夫や、こんなもん気の持ち様や。
しっかりしろ」
と、耳元で声をかけました。
しかし、友人は
叫び声を上げるだけでした。
口の端が泡だってきている
ほどでした。
たまりかねた私は、
「黙れ、落ち着け!!」
と大声を上げて怒鳴り、
髪の毛を掴んで
顎をしゃくりあげました。
すると、友人は
叫ぶのを止めたかと思うと、
「ふぅぅ ううっ!!」と、
甲高い声を上げたかと思うと、
私の腕に顔をうずめるように
しがみ付いてきました。
私は友人に、
「どうした、もう大丈夫なんか」
と聞くと、
友人は顔を埋めたまま、
首を横に振りました。
私「とりあえず水飲もう」
と友人から離れようとすると、
叫び声を上げ、私の名前を二度叫び、
友人「離れんといてくれえ!!」
と泣き声で言いました。
仕方なく私は、
その状態で30分くらいの間
じっとしていました。
ある程度落ち着いた友人が、
子供のようにせがむのを
なんとか言い聞かせ、
先輩Aの彼女に、
代わりに様子を見てもらい、
先輩A、Bの二人と大家さんと
部屋の外へ行き、
大家さんにひとしきりお詫びして、
3人で話し合いました。
(大家さんは、近所の苦情があったのと、
隣に住んでいたため来たようです)
私は「やっぱり○○行ったせいかな」と、
先輩Bにも足を掴まれた件を話し、
部屋に居たジャージの男や、
戸棚の顔についても2人に話しました。