4人家族に襲った水難の怪異 2/2

水の中

 

心のよりどころとなっていた祖母が、

自宅の風呂場で溺れて亡くなったのです。

 

高齢者が風呂場で亡くなる事自体は

珍しくないとはいえ、

 

両親も弟も水の事故で亡くしている

Sさんにとっては、

 

耐え難い衝撃だったでしょう。

 

その頃からSさんは

自宅に引きこもるようになり、

 

高校への進学もせずに、

祖母の遺産で暮らすようになりました。

 

外へはあまり出ずに、

N先輩と会うのもいつも自宅で、

 

そのうちにN先輩は

自分の両親に事情を話し、

 

泊まり込みの許可をもらったことで、

 

食料を買い込むのもN先輩がするように

なっていったそうです。

 

そんな生活がSさんに

追い討ちをかけたのか、

 

やがてSさんは毎晩のように

悪夢を見るようになりました。

 

その悪夢が、

冒頭に話した悪夢と酷似するものでした。

 

Sさんの場合は、

それが毎晩進行していって、

 

足音がどんどん

近づいて来ていたそうです。

 

心配するN先輩にも、

 

「あの足音が側に来た時に、

自分は死ぬ」

 

と話していたそうです。

 

そんな生活がしばらく続いた、

ある日の夜。

 

お風呂に入っていたSさんが

大きな悲鳴をあげ、

 

何かに脅えるようにして風呂場の戸を

力いっぱい叩いたそうです。

 

何事かと慌てたN先輩が

風呂場に向かうと、

 

既に悲鳴も戸を叩く音も

途切れていたので、

 

とっさに戸を開こうとすると、

指先で幾つもの『何か』が潰れました。

 

驚いて取っ手の部分を確認してみると、

 

びっしりと埋め尽くすほどの

ナメクジが這っていたそうです。

 

その感触に嫌悪しながらも、

 

N先輩は取っ手に手を掛け、

勢いよく戸を開けると、

 

そこには体操座りのような格好で、

頭まで湯の中に沈んだSさんがいたそうです。

 

無我夢中でSさんを引き上げて

救急車を呼びましたが、

 

その甲斐も無く、

 

Sさんもまた家族と同じように

水の中で亡くなったそうです。

 

その後、

 

N先輩はショックから立ち直れずに

精神科へ入院する事になり、

 

私がこの話を聞いたのも、

その頃のことでした。

 

今ではそんなN先輩も

悪夢を見てしまうそうで、

 

誰とも口を聞けず、

面会もさせてもらえなくなりましたが、

 

N先輩の両親だけがこっそりと、

 

知人の中でも一番仲の良かった私にだけ、

日記帳を見せてもらえました。

 

そこに書かれた悪夢の話、

Sさんの話。

 

そして、

 

「呪われた」とか、

「伝染るかもしれない」という文字が、

 

何度も書かれていました。

 

もし私が見た悪夢が、

この二人の悪夢と同じものだとすれば、

 

私もN先輩も、

 

Sさんの一家のように伝染するもので

同じ運命を辿るのでしょうか・・・

 

そして、

 

ナメクジと髪の長い女は

一体何なのでしょうか・・・

 

今はとても怖いです。

 

(終)

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