バレンタイン

 

藤原君がおかしいというより、

 

俺の周り全てがおかしいんじゃないかと

思い始めたのは一か月前のこと。

 

いわゆるバレンタインというやつだ。

 

残念なことに、

 

頬を赤らめてチョコレートを

渡してくれるような女の子は

 

俺の前には一向に現れず、

 

クラスメイトの女子たちが、

 

板チョコやチロルチョコを

くれるだけだった。

 

空しすぎて死にたかった。

 

しかも、友人の藤原君は、

 

いかにも怪しい見た目なのに

意外とモテるらしく、

 

下級生の女の子や

違うクラスの女子から、

 

いくつか手作りチョコを

貰っていた。

 

これより悔しいことなんか、

そうそうないと思う。

 

甘党な藤原君はチョコレートを

有り難くリュックにしまい込み、 

 

時折授業中にコッソリ食べていた。

 

羨ましい。

死ねばいい。

 

そんな悪夢のバレンタインデーの

終わりがけ、

 

授業を終えた俺たちは

帰り道を歩いていたのだが、

 

その時に更なる悪夢が起きた。

 

彼女であるヒロミちゃんにチョコが貰えなくて

ブツブツ言う藤原君に、

 

ちょっぴりざまあみろとか

思っていた俺の前に、

 

突然、女の子が走って来た。

 

即座に俺のセンサーが反応した。

 

待ちに待ったチョコレートだ!

 

実際、女の子は

赤い紙袋を持っていた。

 

見たことはなかったが、

ショートカットの可愛い女の子だった。

 

「あの、これ、貰ってください」

 

女の子はにっこり笑って、

俺にチョコレートを渡してくれた。

 

俺はニタニタして上手くお礼も

言えなかったが、

 

女の子はペコリと頭を下げると

走って行った。

 

「可愛い!超可愛いね!」

 

俺は喜々として藤原君に言ったが、

藤原君はクソ面白くなさそうな顔で言った。

 

「でも残念だね。まだまだ

童貞卒業は難しそうだよ」

 

なんでそれを知ってるんだ。

 

てゆうかどういう意味だ。

 

そう問い詰めると

藤原君はニヤリと笑い、

 

俺から素早く紙袋を奪って

チョコレートの箱を取り出した。

 

「なにすんだよ!」

 

せっかくのチョコを奪われて

マジギレした俺は取り返そうとしたが、

 

藤原君は器用に箱から

チョコを取り出すと、

 

俺の目の前でチョコレートを

二つに割った。

 

そしてそれを見て、

俺はゾッとした。

 

二つに割られたチョコレートから、

 

まるで糸を引くように大量の

長い髪の毛が出てきたからだ。

 

まさか今時マジで、

 

こんな呪いみたいなおまじないを

やる奴がいるとは・・・。

 

しかも、

 

ただのおまじないにしては

夥しい量の髪の毛だった。

 

藤原君はアコーディオンのように

チョコレートで遊びながら、

 

「あれ、2組の山崎だよ。

 

昨日まで髪長かったから、

おかしいなあと思ってね。

 

僕のバイト先のオカルトショップに

呪いの方法聞きに来てたし」

 

と、ぬかした。

 

知ってたなら早く言えばいいものを、

 

彼女に相手にされなかった

八つ当たりとしか思えない。

 

大体そんなとこでバイトすんな。

 

しかも藤原君はチョコレートを

大事に箱にしまい直すと、

 

「面白いものがあったよ」

 

と、紙袋から

手紙のようなものを出した。

 

そこにはただひたすら、

 

『好き好き好き好きき好き

好き好き好き好きき好き』

 

とあり、 

2枚目の便箋には、

 

『あなたの子どもを産みたい』

『恋はいつしか愛に変わった』

 

ポエムなんかも書かれていた。

 

3枚目には意味不明な赤い手形。

 

怖い。

 

気持ち悪いを越えて怖かった。

 

正直こんなの、

ドラマの中だけだと思ってた。

 

しかし不意に振り向けば、 

 

走って帰ったはずの女の子が、

遠くからじっとこちらを見つめていた。

 

捨てたら殺される気がした。

 

「どうしよう、どうしよう藤原君」

 

「さあ?面白いじゃないか。

 

僕もお得意さんをないがしろには

したくないし」

 

頼ってみたが、

あっさり相手にされなかった。

 

頭の中で藤原君に死ねと、

何度も呟いた。

 

だが藤原君はまたニヤって笑うと、

 

「まあ、所詮は素人。

返り討ちに遭うだろうね」

 

と言った。

 

俺は意味がわからなかったが、

藤原君はそれ以上何も言わなかった。

 

俺ももう何も言う気力がせず、

 

女の子の視線を背中に受けながら

黙って帰った。

 

それから特に何事もなく

数週間が過ぎた時、

 

例の山崎さんが、

転校していたのを知った。

 

バレンタインデーの

すぐ後だったらしい。

 

彼女が転校するからと、

 

最後にチョコレートをくれて

ちょっとやりすぎてしまったのか、

 

呪いの返り討ちに遭って転校する

ようなことになったのかはわからないが、

 

藤原君の何時にも増して

ニヤついた顔から思うに、

 

後者のような気がした。

 

とにかく色んな意味で恐ろしい

バレンタインだったが、

 

ホワイトデーなのにお返し出来る相手が

いないこの事実が、

 

一番恐ろしい気もしている。

 

(終)

シリーズ続編→地元で有名なアパートへ

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