隠岐のコトリバコ 5/8

次、Jさんの話。

 

J「まず、箱のことを

説明したほうがいいですかな。

 

チッポウ(シッポウかと思ってましたが

チッポウらしい)は、Sの家、J家、

そして斜め向いにあったT家の3家で、

管理してきたものです。

 

3家に割り当てられて箱です。

 

そして、

あの箱は3家持ち回りで保管し、

家主の死後、

次の役回りの家の家主が葬儀後、

前任者の跡取りから受け取り、

受取った家主がまた死ぬまで保管し、

また次へ、次へと繰り返す。

 

受取った家主は、

跡取りに箱のことを伝える。

 

跡取りが居ない場合は、

跡取りが出来た後に伝える。

 

どうしても跡取りに恵まれなかった場合、

次の持ち回りの家に渡す。

 

他の班でも同じです。

3家だったり4世帯だったりしますが。

 

そして、

他の班が持っている箱については、

お互い話題にしないこと。

 

回す理由は、

箱の中身を薄めるためです。

 

箱を受取った家主は、決して箱に

女子供を近づけてはいけない。

 

そして、

箱を管理していない家は、

管理している家を監視する。

 

また、Mの家から札をもらい、

箱に張ってある古い札と貼り替える。

 

約束の年数を保管し、

箱の中身が薄まった後、

Mの家に届け処理してもらう。

 

M神社(仮にそう呼びます)

昔にそういう約束をしたらしい」

 

M「それで、俺の家は昔の約束通り、

持ち込まれた箱を処理、供養してたんだ。

ここにある全ての箱と、

箱の現在の保管者の管理簿を付けて」

 

J「そうです。本来なら私が、

S爺が亡くなったときに、

箱を引き継ぐはずでした。

 

でも、本当に怖かったんです、

申し訳ない許して欲しい。

 

Tの父親が死に(Sの家の前任者です)

引き継いだS爺も立て続けに死に、

男には影響ないと分かっていても怖かった。

 

そんな状態で、いつS父が

箱を持って来るのか怯えてたんです。

 

でも、葬儀後、

日が経ってもS父が来ない。

 

それで、T(S家の前任者の跡取り)

相談したんです。

 

『もしかしたら、

S父は何も知らないのかもしれない』

 

『箱から逃げられるかもしれない』

 

と。

 

そしてまず、

S父に箱のことをそれとなく聞き、

何も知らされていないことを

確認しました。

 

そして納屋の監視は続け、

S家に箱を置いたままにしておくこと、

 

Tは札の貼り替えをした後、

しばらくして引っ越すこと。

(松江に行ったらしいです)

 

そうすれば、他班からは

『あそこは終わったんだな』

と思ってもらえるかもしれないから。

 

引き継ぐはずだった私が、

S家の監視を続けること。

 

そして、約束の年が来たら、

Jが納屋から持ち出しM神社に届けること。

 

そして・・・・

本当に、本当に申し訳ない。

 

それまでに、箱にSやSの母が近づいて

死んでしまったとしても、

 

『箱のことはSの家は知らない。

他班の箱のことは触れることは禁止だから、

ばれることは無いだろう』

 

と、Tと相談したんです。

本当に申し訳ない。

 

だから、他班の箱のことは分からない。

こんなことは無いと思う、申し訳ない」

 

Jさんは土下座して、

何度も謝ってました。

 

S父さんは死んだS爺さんに、

納屋には近づくな

とは言われていたそうです。

 

また、実際気味の悪い納屋で、

あえて近づこうとは思ってなかったようです。

Sも同様に。

 

それで今回、

どうせなら取り壊そうという話になり、

中の整理をしていて、

 

そのときにSが箱を見つけてしまった・・・

という経緯でした。

 

S父さん、S母さん、S婆さん、

信じられないという感じでしたが、

 

ただS婆さんだけが、

なにやら納得したような感じで、

 

S婆「納屋には、だから近づかせて

もらえなかったのか」

 

という風なことをおっしゃってました。

 

M「なるほど、そういうことでしたか・・・

引継ぎはしなかったとはいえ、

監視しなければならず、

結局は箱から逃げることは

出来なかったんですね。 

結局苦しんだと。

 

決まりの年までたしかあと19年でしたよね?

・・・引き継いでいたとしても、

結局は俺が祓うことになってたのかな。

 

S父さん、S母さん、S婆さん、S・・・

現実味の無い話で、

まだ何が何だか分からないと思う。

でもこれは現実で、このご時世に

アホみたいに思うかもしらんが、現実で。

 

でも、Jさんを怒らないであげてほしい。

あの箱が何か知ってるもんにとっちゃ、

それほど逃げたいもんだけん。

 

まぁ、もう箱はないんだけん安心だが、

面白い話が聞けて楽しかったと思って、

Jさんを許してやって欲しい」

 

Jさんうつむいて、うなだれて、

見ててなんだか痛々しかったです。

 

(続く)隠岐のコトリバコ 6/8へ

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