禁后(パンドラ)4/7

翌日から、私の親もA達の親も

一切この件に関する話はせず、

D子がどうなったかもわかりません。

 

学校には一身上の都合となっていた

ようですが、一ヵ月程して

どこかへ引っ越してしまったそうです。

 

また、あの日、私達以外の家にも

連絡が行ったらしく、

あの空き家に関する話は

自然と減っていきました。

 

ガラス戸などにも厳重な対策が施され、

中に入れなくなったとも聞いています。

 

私やA達は、あれ以来一度も

あの空き家に近づいておらず、

D子の事もあってか

疎遠になっていきました。

 

高校も別々でしたし、

私も三人も町を出ていき、

それからもう十年以上になります。

 

ここまで下手な長文に付き合って

くださったのに申し訳ないのですが、

結局何もわからずじまいです。

 

ただ、最後に・・・

 

私が大学を卒業した頃ですが、

D子のお母さんから私の母宛てに、

手紙がありました。

 

内容は、どうしても教えてもらえなかった

のですが、その時の母の言葉が

意味深だったのが、

今でも引っ掛かっています。

 

「母親ってのは、最後まで子供のために

隠し持ってる選択があるのよ。

もし、ああなってしまったのが

あんただったとしたら、

私もそれを選んでたと思うわ。

それが間違った答えだとしてもね」

 

代々、母から娘へと、三つの儀式が

受け継がれていた、ある家系にまつわる話。

 

まずはその家系について説明します。

 

その家系では、娘は母の『所有物』とされ、

娘を『材料』として扱う、

ある儀式が行われていました。

 

母親は二人または三人の女子を産み、

その内の一人を『材料』に選びます。

(男子が生まれる可能性もあるはずですが、

その場合どうしていたのかはわかりません)

 

選んだ娘には二つの名前を付け、

一方は母親だけが知る、

本当の名として生涯隠し通されます。

 

万が一知られた時の事も考え、

本来その字が持つものとは全く違う

読み方が当てられるため、

字がわかったとしても、

読み方は絶対に母親しか知り得ません。

 

母親と娘の二人きりだったとしても、

決して隠し名で呼ぶ事はありませんでした。

 

忌み名に似たものかも知れませんが、

『母の所有物』であることを

強調と証明するためにしていたそうです。

 

また、隠し名を付けた日に必ず鏡台を用意し、

娘の10,13,16歳の誕生日以外には

絶対に、その鏡台を娘に見せない、

という決まりもありました。

 

これも、来たるべき日のための下準備でした。

 

本当の名を誰にも呼ばれることのないまま、

『材料』としての価値を上げるため、

幼少時から母親の『教育』が始まります。

(選ばれなかった方の娘は、

ごく普通に育てられていきます)

 

例えば・・・

 

・猫、もしくは犬の顔を

   バラバラに切り分けさせる

 

・しっぽだけ残した胴体を飼う

   (娘の周囲の者が全員、

   これを生きているものとして扱い、

   娘にそれが真実であると

   刷り込ませていったそうです)

 

・猫の耳と髭を使った呪術を教え、

   その呪術で鼠を殺す

 

・蜘蛛を細かく解体させ、

   元の形に組み直させる

 

・糞尿を食事に(自分や他人のもの)など。

 

全容はとても書けないので

ほんの一部ですが、

どれもこれも聞いただけで

吐き気をもよおしてしまうような

ものばかりでした。

 

中でも動物や虫、特に猫に関するものが

全体の3分の1ぐらいだったのですが、

これは理由があります。

 

この家系では男と関わりを持つのは、

子を産むためだけであり、

目的数の女子を産んだ時点で

関係が断たれるのですが、

条件として事前に提示したにも関わらず、

家系や呪術の秘密を探ろうとする

男も中にはいました。

 

その対応として、ある代からは

男と交わった際に、呪術を使って

憑きものを移すようになったのです。

 

それによって、自分達が殺した

猫などの怨念は全て男の元へ行き、

関わった男達の家で、

憑きもの筋のように災いが

起こるようになっていたそうです。

 

そうする事で、家系の内情には立ち入らない

という条件を守らせていました。

 

こうした事情もあって、猫などの動物を

『教育』によく使用していたのです。

 

『材料』として適した歪んだ常識、

歪んだ価値観、

歪んだ嗜好などを形成させるための

異常な『教育』は、

代々の母娘間で13年間も続けられます。

 

その間で、三つの儀式の内の

二つが行われます。

 

(続く)禁后(パンドラ)5/7へ

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