禁后(パンドラ)6/7

そうしてしばらく月日が経ったある年、

一人の女性が結婚し妻となりました。

 

八千代という女性です。

 

悪習が廃れた後の生まれである母の元で、

ごく普通に育ってきた女性でした。

 

周囲の人達からも可愛がられ、

平凡な人生を歩んできていましたが、

良き相手を見つけ、

長年の交際の末の結婚となったのです。

 

彼女は自分の家系については、

母から多少聞かされていたので

知っていましたが、

特に関心を持った事はありませんでした。

 

妻となって数年後には娘を出産、

貴子と名付けます。

 

母から教わった通り隠し名も付け、

鏡台も自分と同じものを揃えました。

 

そうして幸せな日々が続くと

思われていましたが、

娘の貴子が10歳を迎える日に

異変が起こりました。

 

その日、八千代は両親の元へ出かけており、

家には貴子と夫だけでした。

 

用事を済ませ、夜になる頃に

八千代が家に戻ると、

信じられない光景が広がっていました。

 

何枚かの爪が剥がされ、

歯も何本か抜かれた状態で

貴子が死んでいたのです。

 

家の中を見渡すと、

しまっておいたはずの貴子の隠し名を

書いた紙が床に落ちており、

剥がされた爪と抜かれた歯は、

貴子の鏡台に散らばっていました。

 

夫の姿はありません。

 

何が起こったのかまったくわからず、

娘の体に泣き縋るしか出来ませんでした。

 

異変に気付いた近所の人達が

すぐに駆け付けるも、八千代は

ただずっと貴子に泣き縋っていたそうです。

 

状況が飲み込めなかった住民達は、

ひとまず八千代の両親に知らせる事にし、

何人かは八千代の夫を探しに出ていきました。

 

この時、八千代を一人にしてしまったのです。

 

その晩のうちに、八千代は貴子の傍で

自害しました。

 

住民達が八千代の両親に知らせたところ、

現場の状況を聞いた両親は、

落ち着いた様子でした。

 

「想像はつく。八千代から聞いていた

儀式を試そうとしたんだろ。

八千代には詳しく話したことはないから、

断片的な情報しかわからんかったはずだが、

貴子が10歳になるまで待っていやがったな」

 

と言って、八千代の家へ向かいました。

 

八千代の家に着くと、さっきまで

泣き縋っていた八千代も死んでいる・・・

 

住民達は、ただ愕然とするしか

ありませんでした。

 

八千代の両親は終始落ち着いたまま、

「わしらが出てくるまで誰も入ってくるな」

と言い、しばらく出てこなかったそうです。

 

数時間ほどして、やっと両親が出てくると、

「二人はわしらで供養する。

夫は探さなくていい。理由は今にわかる」

 

と住民達に告げ、

その日は強引に解散させました。

 

それから数日間、夫の行方は

つかめないままだったのですが、

程なくして、八千代の家の前で

亡くなっているのが見つかりました。

 

口に大量の長い髪の毛を含んで

死んでいたそうです。

 

どういう事かと、住民達が

八千代の両親に尋ねると、

 

「今後、八千代の家に入ったものはああなる。

そういう呪いをかけたからな。

あの子らは、悪習からやっと解き放たれた

新しい時代の子達なんだ。

こうなってしまったのは残念だが、

せめて静かに眠らせてやってくれ」

 

と説明し、八千代の家を

このまま残していくように指示しました。

 

これ以来、二人への供養も兼ねて、

八千代の家はそのまま残される事と

なったそうです。

 

家の中に何があるのかは

誰も知りませんでしたが、

八千代の両親の言葉を守り、

誰も中を見ようとはしませんでした。

 

そうして、二人への供養の場所として

長らく残されていたのです。

 

その後、老朽化などの理由で

どうしても取り壊すことになった際、

初めて中に何があるかを

住民達は知りました。

 

そこにあった私達が見たものは、

あの鏡台と髪でした。

 

八千代の家は二階がなかったので、

玄関を開けた目の前に、

並んで置かれていたそうです。

 

八千代の両親がどうやったのかは

わかりませんが、

やはり形を成したままの髪でした。

 

これが呪いであると悟った住民達は、

出来るかぎり慎重に運び出し、

新しく建てた空き家の中へと移しました。

 

この時、誤って引き出しの中身を

見てしまったそうですが、

何も起こらなかったそうです。

 

これに関しては、

供養をしていた人達だったからでは?

という事になっています。

 

空き家は町から少し離れた場所に建てられ、

玄関が無いのは出入りする家ではないから、

窓・ガラス戸は日当たりや風通しなど、

供養の気持ちからだという事でした。

 

こうして誰も入ってはいけない家として、

町全体で伝えられていき、

大人達だけが知る秘密となったのです。

 

ここまでが、あの鏡台と髪の話です。

 

鏡台と髪は、八千代と貴子という

母娘のものであり、

言葉は隠し名として付けられた名前でした。

 

ここから最後の話になります。

 

空き家が建てられて以降、

中に入ろうとする者は一人もいませんでした。

 

前述の通り、空き家へ移る際に

引き出しの中を見てしまったため、

中に何があるかが

一部の人達に伝わっていたからです。

 

私達の時と同様、

事実を知らない者に対して

過剰に厳しくする事で、

何も起こらないようにしていました。

 

ところが、私達の親の間で一度だけ

事が起こってしまったそうです。

 

私と一緒に空き家へ行った

Aの家族について、少しふれたのを

覚えていらっしゃるでしょうか。

 

Aの祖母と母が、もともと町の出身であり、

結婚して他県に住んでいたという話です。

 

これは、事実ではありませんでした。

 

子供の頃に、Aの母とBの両親、

そしてもう一人男の子(Eとします)

を入れた四人で、

あの空き家へ行ったのです。

 

私達とは違って夜中に家を抜け出し、

わざわざハシゴを持参して

二階の窓から入ったそうです。

 

窓から入った部屋には何もなく、

やはり期待を裏切られたような感じで

ガクッとし、隣にある部屋へ行きました。

 

そこであの鏡台と髪を見て、

夜中という事もあり、

凄まじい恐怖を感じます。

 

(続く)禁后(パンドラ)7/7へ

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