雨ガッパを着て片手には食べかけたおにぎり
これは、実際に幽霊を見たかもしれない体験談。
私の仕事は、某メーカーの下請け会社でトイレやユニットバスなどの修理をしている。
お盆の終わり頃、とある家のトイレを修理するために訪問した。
修理はすぐに出来そうで安心し、トイレのドアを開けたまま作業をしていた。
すると、後ろから「裏口も見てください」と声をかけられた。
年配の夫婦だけかと思っていたが、20歳くらいの女の子がカーキ色のカッパを着て、ズブ濡れで立っていた。
しかも、片手には食べかけたおにぎり。
「あ、はい。裏口ですか?」
私は娘さんかと思い、「雨降ってきたんですね」と言うと、女の子はコクと頷いて2階へ上がって行った。
修理が無事終わり、奥さんに「直りました。あの、裏口も見てほしいと娘さんに聞きましたが・・・」と言うと、「娘?」と聞き返された。
私は「はい。カッパを着て、おにぎり・・・」と言いかけたところで、ふと居間の横の和室を見ると、仏壇の横にさっきの女の子の遺影が掛かっていた。
そして仏壇には、おにぎりと卵焼きが置かれていた。
結局、奥さんと裏口を開けて確認すると、花壇の辺りにブチの猫が倒れていた。※ブチの猫とは、二つの毛色をもつ猫のこと。
奥さんが旦那さんにその話をすると、「すみません、お盆ですから」とだけ言われた。
そして昨日、数年ぶりにその家へ点検に行くと、あの時のブチの猫はその家で飼われていた。
ちなみにその当時、外に出てみると雨は降っていなく、道路もカラカラに乾いており暑かった。
たぶん私が見たのは幽霊なんだろう。
幽霊の雰囲気でよく聞く『白い服に長い髪で青白い顔』ではなく、肩くらいの髪の長さで、頬っぺたの血色がわかるような普通の女の子だった。
それに、遺影の写真より元気そうな感じで、今でも自分で見た光景が何だか信じられない。
(終)