大雪の中で血を流している女 2/2

雪

 

家に帰ると、

 

母ちゃんが台所で

朝飯の支度をしていた。

 

体の芯まで冷えた俺は、

すぐコタツに潜り込み、

 

そのままの姿勢で先ほどまでの経過を

母ちゃんに話した。

 

母ちゃんは「気味が悪いねえ」とか

言いながら味噌汁を作っていたが、

 

ふと、台所の窓から外を見ながら、

 

「あれ、その女の人じゃないかね?」

 

と俺を呼んだ。

 

俺は台所の窓に飛んでいったが、

 

窓から見えるのは

降りしきる雪ばかりだった。

 

「私の見間違いかねえ」

 

とボヤく母ちゃんを尻目に、

俺は再びコタツに戻ろうとしたが、

 

その時、

 

コタツが置いてある

古い六畳間の窓の外から、

 

ガラスに顔を近づけて、

 

こちらを見ている女と視線が

ばったり合ってしまった。

 

女は細面の青白い顔で髪が長く、

 

そして口のまわりと首のまわりに

ベッタリと血が付いていた。

 

俺は体が凍りつき、

頭の中が一瞬まっ白になったが、

 

気がついた時には、

女の顔は消えていた。

 

慌てて窓を開けて表を見たが、

女の姿も足跡もなかった。

 

俺は迷った挙句、

駐在所に電話を入れる事にした。

 

親子揃って、

 

頭がおかしくなったんじゃないかと

言われそうで躊躇ったのだけど、

 

俺が見たのが、

幻や幽霊であったとしても、

 

見たことは事実なのだ。

 

受話器の向こうで

何度か呼出し音がしたあと、

 

聞き慣れた声の警官が出た。

 

俺が自分の名を告げると、

警官は開口一番、

 

「なんだ、また出たってのか?」

 

と言ったので、

 

俺は気後れして、

親父はまだそこにいるんですか、

 

とだけ聞いた。

 

親父は30分ほど前に駐在所を出た、

との事だった。

 

俺は母ちゃんと一緒に、

親父の帰りを待った。

 

30分前に出てるなら、

もう着いていてもいい頃だ。

 

だけど親父は、

なかなか帰って来なかった。

 

俺は母ちゃんと二人で

冷めた朝飯を食いながら、

 

親父は真っ直ぐビニールハウスを

見に行ったんだろう、

 

と話した。

 

だけど、

昼過ぎになっても戻って来ないので、

 

俺はビニールハウスへ

親父を捜しに行った。

 

例の橋まで来た時、

 

やや新い足跡が一人分、

橋の上に続いているのが見えた。

 

その足跡を目で追うと、

それは橋の途中の、

 

例の女がうずくまっていた

という辺りまで続き、

 

そこで消えていた。

 

その欄干の上の雪は、

半分ほど欠けていた。

 

俺は欄干に近寄り、

そこから川面を見下ろした。

 

まっ白な雪の土手に挟まれた川の、

膝くらいまでしかない流水の中に、

 

黒いジャンパー姿の長靴を履いた男が

うつ伏せに倒れていた。

 

俺は土手を走り下り、

川に入っていった。

 

うつ伏せに倒れている男は、

親父だった。

 

俺は必死に親父を土手に

引きずり上げたけれど、

 

すでに脈も呼吸も止まっていた。

 

降りしきる雪の中を見上げると、

川の対岸に髪の長いコート姿の女が、

 

口、首、胸のまわりを

血で真っ赤に染めて、

 

こちらを見下ろして立っていた。

 

女はすぐに、

雪の中に消えた。

 

俺は母ちゃんと二人、

まだこの家に住んでいるが、

 

あれ以来、

雪の降る日は一歩も外に出なくなった。

 

(終)

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