行方不明になった幼なじみに起きた事 2/2

テレビ

前回までの話はこちら

俺の母が受話器を取り、「とりあえずウチの人(俺の父)に電話してみる」と言い出した。

 

すると、ノリオの母が「先に警察に電話して!」と泣きながら叫んだ。

 

躊躇する母から電話の子機を奪い、俺に「今の話しホントやね?」と念を押し、俺が頷くのを見て110番通報した。

 

ただ興奮状態だった為、ノリオの母は俺の家じゃなく自分の家の住所を告げてしまい、取りあえず3人でノリオの家に移動することになった。

 

母は、「やっぱりお父さんに連絡する」と言って先に行くよう言い、家に戻った。

 

途中、ノリオの母はチッと舌打ちし、「○○さんにも電話しなきゃ」と一人呟いていた。

 

パトカーがやって来て、パトカーの中で話を訊かれたが、結局は俺とノリオの母、遅れてきた母と3人が警察署に連れて行かれ、繰り返し話をすることになった。

 

その日に警察署から解放され、家に帰って今日あったことを父に説明した。

 

すると父曰く、あそこは部落だという。

 

他の部落と違って、ある意味保守的で独自の組合(互助会)を作っている。

 

昔はよく近隣の集落と揉め事を起こしていたという。

 

また、あのおっさんのことも知っていて、名前をSといい、ウチの家系も古いが、Sの家も古くからあるはず、と言っていた。

 

そんな話を聞いていると、家の電話が鳴った。

 

ノリオの母だった。

 

なんと失踪2日目にして、ノリオがあの池の近くにいるところを警察に保護されたというのだ。

 

もう夜も遅いということで、俺は家に残され、父と母がノリオの家に向かった。

 

次の日に両親から聞かされた話だと、ノリオはだいぶ疲れた様子だったらしく、事実1ヶ月間学校を休んだ。

 

その間、俺はノリオと面会させてもらえなかった。

 

その後も俺と母は3回ほど警察署に呼ばれたが、当然新しい証言などなく、繰り返し説明するだけだった。

 

その都度、何か分かったことはないかと訊いてみたが、子供に詳しい話をしてくれるはずはなかった。

 

ただ、母は少し教えてもらったらしく、警察が言うには、男の家からノリオの滞在した痕跡も、件のビデオテープも見つからなかったという。

 

1ヶ月後学校に復帰したノリオは、外見上は特に変わった様子もなかった。

 

ただ、クラスが違うから実際に目にしてはいないけれど、保健の授業で急に号泣し、教室を飛び出したことがあったらしい。

 

それが原因ではないだろうけれど、あの失踪事件以後、ノリオに対して心無い憶測や中傷があった。

 

結局、ノリオは6年に上がる前に転校することになった。

 

登校再開後すぐに、ノリオに直接あのビデオのナレーションについて訊いてみた。

 

あのおっさんは本当に無関係なのか、と。

 

するとノリオは猛烈に激高し、聞き取れないほどの罵声を浴びせられた。

 

そういうことがあり、今は時期が悪いと距離を置いていると、その後ほどなくしてノリオの母は離婚し、ノリオとタカシを連れて地区から出て行った。

 

結局、ノリオとはそれっきりになってしまった。

 

大学生になった俺は、部落の組合に話を聞きに行った。

 

「郷土史の中の部落差別を調べているのでその話を聞かせて欲しい」と電話すると、快く承諾してくれた。

 

電話で聞いた住所に行くと初老の男性の自宅で、その人が話をしてくれるという。

 

親切な応対に少し気が引けたが、ノリオの失踪にSという男は関わっていないのか、そもそもSとは何者で、今どこにいるのか、単刀直入に訊いてみた。

 

応対してくれた初老の組合員は困惑していたが、話してくれた。

 

ノリオくんの失踪とSさんは関係ない。

 

Sさんの転居と、Sさんに対する警察の不当な家宅捜査が同時期だったのは偶然。

 

Sさんは行政保護を受けていないため、組合が生活の手助けをしていた。

 

Sさんは高齢知的障害者。

 

転居先は遠くの施設だが、場所は教えられない。

 

Sさんはすでに亡くなっている。

 

・・・というもので、期待したものは何も得られなかった。

 

しかし、無礼を詫びた後の帰り際のことだった。

 

5年ほど前、組合事務所にノリオの母が怒鳴り込みに来たことがあり、宥めるのに大変だった、という話を聞かされた。

 

俺は今でも、ノリオの失踪にSという男が関わっていると思っている。

 

今、ノリオがどこにいるか分からない。

 

でも、俺の幼なじみのノリオは、あの東京五輪のドキュメンタリービデオのナレーションとして未だ捕らえられたままでいる、なんて事を最近よく考えてしまう。

 

(終)

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