身内が亡くなると蔵に閉じ込められた
まだ俺が小さかった時に叔母が死んだ。
葬式の後に集まった人達が寿司などを食べていて、俺もビンのオレンジジュースを飲んでいたのを覚えている。
祖母(死んだ叔母の母親)に呼ばれて、家の外の蔵に連れて行かれた。
普段の祖母は優しいのに、その時ばかりは何の説明もなく無言で、少し怖かった気がする。
蔵に着くと祖母に蔵の中に閉じ込められ、「迎えに来るまで絶対に外に出てはいけない」と言われた。
葬式で何か悪いことをして怒られたんだと思った俺は、小さな電球だけの蔵の中は怖かったけれど大人しくしていた。
閉じ込められた理由は何だったのか?
祖母が蔵から去って2~3時間くらいが経った。(本当はもっと短かったかもしれないが)
蔵の外で大人の声がして、近寄ってきた。
死んだはずの叔母の声だった。
その時はいまいち”死”というものを理解してなかったのか、なんでいるんだろう?程度の感じで、特に怖いとは思わなかった。
叔母は普段通りの口調で俺に、「○○ちゃん、そんなところで何やってるの?みんな家の中にいるから一緒に向こうに戻ろう?」と言われたが、祖母との約束を破ると怒られる気がしたので出ていかなかった。(祖母に外から鍵をされたので、もし扉を開けようとしても開けれなかったと思う)
叔母は食い下がることなく、そのまま去っていった。
それからしばらくして、今度は祖母が迎えにきて、そのままみんなのところに戻った。
その時も祖母からは何の説明もなかったので、自分は叱られたわけではなく、何か子供が邪魔をしてはいけない大人だけの仕事があったんだなと勝手に納得した。
1~2年後、今度は祖父が死んだ。
その時もまた祖母に蔵に閉じ込められ、やはり死んだはずの祖父が俺を探しにきた。
その後、祖母が死んだが、その時は誰にも蔵に行くようには言われなかった。
祖母の葬式があった日の夜、俺はものすごい熱を出して寝込んだ。
なんとなく、蔵に行かなかったから祖母が怒ったんだなと思った。
ただ、あとで父や親戚に聞いても、誰もそんな習慣は知らないとのことだった。
叔母や祖父の葬式の時に、俺が蔵に閉じ込められていたことに気付いていた人もいなかった。
当時は子供だったから記憶も曖昧なのだが、こういった習慣について詳しい人がいたら教えて欲しい。
何か祖母と共に代々伝わってきた“重要なしきたり”が失われたようで怖い・・・。
(終)