0時を過ぎると朝まで開けてはいけない

障子

 

私の田舎には、『とんとん』という習わしがあります。

 

それは、夜中12時を過ぎると部屋ごとの障子を全て閉めきってしまい、朝になるまで開けてはいけない、というものです。

 

ただし、”とんとん”と障子を叩いて返事があれば、その部屋に移ることはできます。

 

田舎に帰ること自体あまりないのですが、これは私が子供の頃、お盆の時に帰った時のことです。

 

奇妙で変な感じを二度経験しました。

 

一度目は、”とんとん”をやらずに障子を開けると、大人がみんな黙り込みました。

 

その直後、「あんた、今日は金縛りに遭うけど、しょうがないからね」と冷静に言われたのですが、なんだかその落ち着いた口調が妙に怖かったのを憶えています。

 

その夜、本当に金縛りに遭いました。

 

二度目は、それから三年後くらいでした。

 

夜中に目が覚めて、トイレへ行くために障子を”とんとん”と叩きました。

 

すると、「どうぞ」と言う声がしたのです。

 

思い返すと、それは亡くなったおばあちゃんの声でした。

 

私は怖くなり、そのまま障子を開けずに布団に戻って潜り込みました。

 

しばらくじっとしていましたが、もう一度”とんとん”としてみました。

 

やっぱりおばあちゃんの声で、「どうぞ」と言う声が返ってきました。

 

その時、大人たちは宵越しでお酒を飲んでいるはずなのに、どうしてこんなに静かなんだろうと気づき、余計に怖くなりました。

 

また布団に潜り、今度はそのまま寝ることにしました。

 

翌朝に起きると、なぜか寝ていたはずの部屋とは別の部屋にいました。

 

子供ながらに夢を見ていたのかなと思いましたが、どこからが夢なのかはわかりません。

 

(終)

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