「お前、水の上を歩いてたぞ」
これは、友人から聞いた不思議な体験話。
大学生の折、サークル仲間と渓流でキャンプをしたのだという。
季節は夏、ちょうど良い感じの砂地もあったので、スイカ割りをしようという流れになった。
ジャンケンで負けた後輩に目隠しをさせ、その場で三度、体を回してから挑んでもらう。
見当違いの方に向かうのを、皆で笑いながら見守った。
「おいおい、そっちに行くと川に嵌るぞー」
誰かがした忠告も空しく、目の見えない後輩は川面に向かって足を踏み出した。
そのまま、つつっと何歩か水の上を歩いて渡る。
皆が呆気に取られていると、水の上に立っている後輩は大声を出した。
「あれっ?何か足元の感触がおかしいんだけど?」
次の瞬間、後輩は水しぶきを上げて水中に没した。
幸いにも浅瀬だったので、服を濡らす程度で済んだという。
「お前、水の上を歩いてたぞ」
そう言われた後輩は、目をパチクリとさせていたらしい。
その後、散々「もう一回!」と川に向かって歩かされたが、彼が水の上を歩くことは二度となかったそうだ。
(終)
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