杉の木のてっぺんに天狗がいた
これは、私が小学2年生の時に体験した、ちょっと不思議だった話。
私の実家がある地域は獅子舞がとても盛んで、祭りが近づくと青年団が獅子舞の練習を公民館で始め、祭り当日は一軒一軒の家の前で獅子舞を舞って周る。
天狗役の人は祭りの花形で、天狗の面にきらびやかな装束で獅子をあおる。
祭りが終わって数日後の日曜日、私は両親と山の畑に出かけた。
杉の木に囲まれた所にぽつんと畑があり、私は両親が作業している間は一人で遊んでいた。
何度も来ている山なので、土地勘があった。
畑から少し離れた場所でふと、独特の気配のようなものを感じて振り返ると、50メートルくらい離れた所の杉の木のてっぺんに『天狗』がいた。
私はなぜかそれを獅子舞の練習だと思い、大変なんだな~と思って杉の木の上でスッと立っている天狗の横顔を見ていた。
しばらく見ていると突然、天狗はふわっとスローモーションのように杉の木から飛び降りた。
私は両親のいる所に戻り、「天狗の練習を見たよ。杉の木から飛び降りてた!」と言ったら、「なに馬鹿なこと言ってるんだ。祭りが終わって練習は終わってるし、第一なんでこんな山の中で練習するんだ。寝てて夢でも見たんか」と笑われた。
確かに、3階建ての建物の高さくらいある木のてっぺんに人が立てるはずがないし、そこから飛び降りることが出来るわけがないし・・・。
そうなら、私が見たのは何だったんだろう。
まさか本当に天狗だったのか!?
(終)