スイセンの花を持ち逃げした元ママ友
今日は、5月5日のこどもの日。
と言っても、
うちは男の子がいないため、
特にやることはなく、
普段通りの休日を、
家でのんびりと過ごしていた。
すると、
庭から物音が聞こえた気がした。
庭に様子を見に行くと、
そこには昔の知人の姿が。
うちの娘が幼稚園へあがる前、
ママ友だった人がそこにいたのだ。
娘が幼稚園に通うことになった時、
別の幼稚園に行ったために
縁は切れていたのだが・・・
その人は、
庭に咲いているスイセンの花の葉を
ハサミで切っていた。
私の存在に気が付いたその人は、
スイセンを抱えたまま、
慌てたように逃げてしまった。
その場にはハサミが残っていた。
スイセン・・・
5月という時期だから菖蒲湯に使うのかなと、
それほど気にはしなかったが、
※菖蒲湯(しょうぶゆ)
5月5日の端午の節句の日に、ショウブ(菖蒲)の根や葉を入れて沸かす風呂のことである。年中行事のひとつ。
置き忘れたハサミを返そうと、
その人の家に行ってみる。
家の前に車はあるから、
家の中にいるとは思うのだが、
チャイムを押しても出てこない。
携帯番号は当時と変わってしまったのか
繋がらず、
家の電話に掛けても、
すぐ留守電になってしまう。
仕方なく、
ハサミは郵便受けの中に入れて
帰ることにした。
夜に夫が帰って来たので相談する。
そして、二人でまた一緒に、
その人の家に行くことにした。
でもやはり、
その人は出てこなかった。
家の明かりは点いているというのに。
夫のアドバイスを受けて、
事情を書いたメモを郵便受けに入れて、
帰ることにした。
その後、一切の連絡もないが、
何もないと信じたい・・・
(終)
解説
夫のアドバイスで、
どんな事情をメモして伝えようと
していたのだろうか?
おそらく、次のようなことを
伝えたかったのかも知れない。
『スイセンには毒がある』
もし食べてしまうと、
死ぬ危険すらあるということを。
※スイセン(水仙)の毒性
スイセンはヒガンバナ科に属する植物で、この植物にはリコリンやシュウ酸カルシウムなどの有毒成分が含まれている。葉や茎など全ての部分に毒が含まれているが、主に球根の部分に多く含まれており、致死量は10gとされている。スイセンの毒による主な中毒症状は、嘔吐や下痢、悪心、発汗、頭痛、昏睡、低体温など。個人差もあるが、食べてから30分以内に発症することが多い。
そして、
もっと怖いことが考えられる。
もし、この人が遺書を残さずに
スイセンを食べて亡くなったとなれば・・・
あのハサミには『私』の指紋が、
しっかりと残ってしまっているだろう。
インターホンにも指紋は残っているはずだ。
となると、
警察に殺人事件として捜査された場合、
真っ先に疑われてしまうのは『私』である。