欄間を通して仏間を覗くと見えたもの
これは、友人から聞いた話です。
友人の祖父の家は能登の方の立派な農家だそうで、毎年お盆の時期には家族総出で里帰りするのだとか。
そして、その家の奥の仏間には立派な『透かし彫りの欄間』があり、友人とそのお兄さんはよく祖父から「この続きの間から欄間を通して仏間を覗くと不思議なものが見えると言われている」と聞いていたそうです。
※欄間(らんま)
採光、通風、装飾といった目的のために天井と鴨居との間に設けられる開口部材。(Wikipediaより)
そこである日、友人とお兄さんは他の家族が不在の際、脚立を持ち出してそれを決行しようとしました。
まずはお兄さんからということで脚立を上り、欄間の彫刻の間から隣の仏間を覗きました。
しかし、お兄さんは5秒ほど無言で覗いた後、静かに脚立から降り、それを畳んでしまったのです。
その後、不思議に思った友人が何度聞いても、お兄さんは無言のままでした。
結局、友人は覗かせてもらえいないままで、お兄さんも一言も何を見たかを話さないまま、その夏の里帰りは終ってしまったそうです。
後日、家に帰って来てからお兄さんが言うには、「長い白髪を垂らした老婆が背を向けて座っていたのが見えた」そうな。
(終)