あるTV局の人形にまつわる話 1/2
呪いの生き人形。
稲川淳二氏が、TV等の心霊特集に
欠かせない存在になった、
切欠の心霊体験談がこれです。
この話は稲川淳二氏自身ももちろん、
TV、雑誌、漫画等も今だに敬遠しています。
それはなぜか・・・
祟りがあると噂されているからです。
いや、正しく言えば、
今だに関係した者達に
祟りが起こっているからです。
あなたも心して読んでください。
生き人形の呪いは、
昭和53年6月から始まりました。
その日、稲川氏は日本放送の
深夜のラジオ番組の仕事をしていました。
今日は、前半を先に録音し、
後半を生で撮るという方法で、
番組は作られる事になっていました。
録音が始まるまでソファーに
座っていた稲川氏は、
大声で泣いている男の声を聞きます。
「いったい何が起こっているのだ」
廊下に出てみると、二人の男性が
かなり離れた場所にいました。
その一人、うずくまっている男が
声をあげて泣いているのです。
泣いている男性は、
『南こうせつ』さんでした。
その南氏をなだめているのが、
稲川氏の知り合いのデレクターでした。
あなたは『わたしにも聞かせて』
を御存知ですか?
『かぐやひめ』のレコードに入っていた、
謎の少女の台詞です。
霊の声が録音された心霊現象として、
伝説になっている事件でした。
南さんはその声を聞いて、
泣いておられたのです。
スタッフが南氏に、
その不思議な声を聞かせたところ、
彼は泣きだしたそうです。
・・・その声の主、
それは南氏がラジオの放送で知り合った、
少女の声らしいのです。
彼女は楽しみにしていた
南さんのコンサートの前に、
病気で亡くなったのです。
その声の主が誰か気付いた南氏は、
悲しくなり泣いていたのでした。
真夜中。
稲川氏のラジオ番組は終了しました。
南氏の事があったからでしょう。
あのデレクターが、
一人で帰るのは恐いからと、
稲川氏を待っていました。
稲川氏は、そのデレクターとタクシーで
帰宅する事になりました。
帰宅中、後ろの席に座る彼は、
高速道路で不思議なモノを見てしまうです。
それは奇妙な標識。
・・・いや、
標識にその時は見えたのですが。
「高速道路に標識?」
再び前方に同じモノが現れました。
・・・それが標識では無い事に、
すぐに気付き、恐怖しました。
着物を着た女の子が、
高速道路の壁の上に立っていたのです。
小さな女の子が。
稲川氏がソレが子供であると気付くと同時に、
その女の子は「ぶぁ~」と膨らみ、
物凄い勢いで車の中を突き抜けて行きました。
稲川氏は突然の出来事に、
声ひとつあげる事ができませんでした。
しかし不思議な事に、それを見たのは、
いや、気付いたのは彼だけだったのです。
そして次の日の朝、彼の奥さんが
不思議な事を言いだしました。
「昨日、泊られた方はどうしたの?」
昨夜タクシーから降りたのは、
もちろん彼だけです。
当然、部屋に入ったのも、
彼ひとりです。
彼女は、彼の後を付いて
入ってきた人の足音を、
絶対聞いたと言い張るのでした。
そして、ソレが一晩中歩き回って
うるさかったと・・・。
次の日、
一緒に帰ったデレクターから
首をかしげながら、
彼にこんな事を聞いてきました。
「そんなわけないんだけど・・・
誰かと一緒に降りたっけ?」
その日の午後、
稲川氏に仕事の依頼が入りました。
人形芝居『呪女十夜(じゆめじゅうや)』。
不幸な女たちの十夜が、
オムニバスで構成される幻想芝居。
その不幸な女達を人形が演じ、
その他の登場人物は、
人間が演じるというものでした。
稲川氏は座長として、
今回の芝居に関る事になっていました。
打ち合わせ中、
その世界では有名な
人形使いの『前野』氏から、
今作られている人形の絵を
見せられて驚きます。
そこに描かれている絵は、
あの高速で見た、
女の子そっくりだったのです。
台本がもう少しで出来上がる頃、
前野さんの家に
完成した人形が届きました。
稲川氏は台本の打ち合わせをかねて、
前野さん宅にその人形を見に行くのでした。
芝居で使う人形は二体。
ひとつが男の子の人形で、
もう一体が女の子人形でした。
その女の子の人形が、
あの高速で見た人形であり、
その後に数々の怪奇現象を起こす
人形なのです。
ちなみにその二体の人形は、
有名な人形作家『橋本三郎』氏が
作られました。
前野さんは数百体の人形達と、
暮らしていました。
稲川氏は前野さん宅で
出来上がった人形を見て、
不思議な事を発見します。
女の子の人形の右手と右足が、
ねじれていたのです。
・・・・どうして直さないのかと
前野さんに訊ねると、
「直したくても直せない」と。
この人形を作られた橋本氏が、
人形を完成させてすぐに、
行方不明になっていたからなのです。
そして次の日、
台本を書いていた作家の方の家が、
全焼してしまいます。
舞台稽古初日までに、
台本は間に合わなくなってしまうのでした。
稲川氏達は、壊れた人形と台本無しで、
舞台稽古を始めるのでした。