仙人が狸と話してるの見ちゃった

タヌキ

 

これは、都会の住処を引き払って山村に住んでいる友人の話。

 

彼とは久しぶりに再会した。

 

バリバリの営業マンだった彼は今、昼は畑仕事をし、夜暗くなる頃には寝る、そんな暮らしをしているそうな。

 

随分と変わったなぁとしみじみ話していると、「いやぁ仙人にはかなわないぜ」と言う。

 

曰く、仙人というのは村の外れにある小山に引き篭もっている人のようで、時折薬草や山菜などを売りに下りてくる以外、接触を避けている人だと。

 

続けて友人は、「俺こないだ仙人がタヌキと話してるの見ちゃった」と言った。

 

さらに、「しかも仙人が話してると、俺にもタヌキが何を言ってるか分かっちゃった」とまで。

 

そのタヌキは何を言ってたんだ?と聞いてみると、「人間ってやつは本当に怖いね。俺の親父の皮目当てで狩りに来やがる」とか、そんなことをぼやいてたそうな。

 

仙人も人間なんじゃ?と聞き返すと、「いんや、仙人は仙人だろう。人の格好をした別のもんだと思うな」と。

 

どうも友人は何かを悟ってしまったようだ。

 

そう思った。

 

(終)

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