おま、しゅーくりーむ持っとらんかの?
これは、友人から聞いた不思議な体験談。
彼は時々、地元の登山会の世話で山道の整備をしている。
その日もノコギリを片手に倒木を片していたのだが、いきなり背中がグッと重くなった。
後ろに手をやったが何も触れず、しかし荷重は耐えきれないほどで、たまらず膝を付く。
四つん這いになった頭の後ろで、問いかける掠れた声があった。
「おま(お前)、しゅーくりーむ持っとらんかの?」
「そんなモン、持ってねぇ!」
思わず叫び返すと、「そっか」と残念そうな声がして背がスッと軽くなる。
それきり声は聞こえなくなった。
まったく人騒がせなヤマビコさんだ。
腹立たしく思いながら作業を続けたが、ふと気になった。
どうしてシュークリームなんて食い物をヤマビコさんが知っているんだ?
思い出す度に、それが不思議なのだという。
ちなみにヤマビコさんとは、彼の地元で『山の妖怪』を指す言葉だということだ。
(終)
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