手にしたものは何でもポケットに入れる女の子
これは、俺が小学生の時に体験した話。
ガキの頃って学年に一人や二人、ちょっと変わった同級生がいたと思う。
鼻くそを食う奴とか、授業中に鼻血を出す奴とか、泣くと椅子をブン回す奴とか…。
俺の同級生には、いつもヘラヘラと笑っていて、“何でもポケットに入れる女の子”がいた。
摘んだ花から消しカスまで、手にした物は何でもポケットに入れる。
だから、その子のズボンは傍から見てもいつも膨れ上がっていて、湿っていることすらあり、当然のように皆から仲間外れにされていた。
当時は社交的だった俺でも、何となくその子を気持ち悪く感じてしまい、関わり合いは避けていた。
そして、このまま関わらずにクラス替えになれば良かったのだが、そうもいかなかった。
その年の秋、運動会でダンスを踊ることになった。
いわゆる、フォークダンスだ。
出席番号の近い男女がペアを組まされることになり、俺とその子が組むことに。
内心では「・・・」という複雑な気持ちだったが、外面の良い子だった俺は大人しく従った。
しかし、ゾッとする事件が起きてしまう。
それを体験したのは練習時間の時。
ダンスが始まる前の、隣り合って立っているだけでも何か悪寒がした…。
相変わらずポケットは膨れ上がっており、何が楽しいのか、ずっとニヤけている。
俺の憂鬱な気分とは裏腹に、呑気な音楽が流れ始め、仕方なくその子の手を握った。
俺はこの子の特徴を、正しく飲み込めていなかったようだ。
そう、この子は“手にしたものは何でもポケットに入れる”のだ。
その時のポケットの中の感触は、今でもたまに思い出す。
俺の拙い語彙力でどこまで伝えられるかはわからないが、言うなれば、あれは『ウジ虫の蒸し風呂』だった。
(終)