何かが近くに居る感じが
それは、どんよりと雲に覆われた
初夏の事でした。
星も見えない夜で、
かなり蒸し暑かった事を
覚えています。
その公園は、民家から
かなり離れているので、
深夜になると、
人気が無くなります。
俺ら友人達の格好の
溜まり場になっていました。
その日の夜、
彼女に振られた俺は、
その公園で一人しょぼくれていました。
「くよくよ悩んでいてもしょうがない」
「早く諦めろ」
なぁんて事を考えながら、
物思いにふけっていました。
どのくらい時間が経ったのか。
公園の隅にあるブランコが
揺れ出したんです。
ギーコ・・・
ギーコ・・・
ギーコ・・・
「誰か来たのかな?」
俺はそう思い、
辺りを見渡しました。
辺りはシーンと静まり返って、
人の居る気配はありません。
「風かぁ・・・」
一人納得していました。
すると、
俺とブランコの間にある
シーソーが、
ガタンガタンと、
ゆっくりと動き出しました。
誰も居ません・・・。
なんか蒸し暑かったはずなのに、
妙に肌寒く感じます。
怖くなった俺は、
自転車に乗って猛ダッシュです。
やっとの思いで家に着き、
落ち着こうと思い、
タバコを手に取りました。
ふぅ。
煙を吐いたその時、
目の前で煙が真っ二つに
割れました。
壁に向かって
煙を吐き出した様に。
「あれ?」
不思議に思った俺は、
もう一度煙を吐いてみました。
ふぅ。
目の前10センチ位の所で、
煙が男の顔型に割れました。
『けむたいんだよ、あんどう』
その男がぼそっと、
俺の目の前で囁きました。
俺の名前は「安藤」です。
(終)