山道で迷っている時に見つけたラーメン屋
2年前、北陸地方のとある山中でのこと。
深夜に彼女とドライブ中、山道で道に迷ってしまった。
ナビは上手く位置を拾ってくれない。
どうにもならず困っていると、パッと明かりが見えた。
そこは『ラーメン屋』だった。
(こんな山奥に?しかも、もう真夜中だぞ?)
何か違和感を感じたが、彼女が「道を訊いてみれば?」と言うので駐車場に車を止めた。
やたら大きい駐車場だが、車は一台も止まっていない。
が、店に入ると驚いた。
かなり広い店内が満席だった。
しかし、よく見ると誰もラーメンに手をつけていない。
ただ座っているだけ。
会話も聞こえない。
シーンと静まり返る店内に、ラーメンの湯気だけがもうもうと舞っている。
怖くなってすぐ店を出て、急いで車を走らせた。
結局、朝方に近くなる頃、通りかかった族車の兄ちゃんが親切にも先導してくれて、ようやく県道まで出られた。
その兄ちゃんにラーメン屋の話をすると・・・
「ああ、知ってるよ。ここらじゃ有名だ。でも、よそ者しか見られないんだ。俺たち地元の人間は、話を聞いたことしかない」
「俺だって、あんたみたくラーメン屋から逃げ出してきて道に迷った人を連れて帰るのは一度や二度じゃねぇもんな」
「ああ、それから、女連れだったなら女店員に話しかけられなかったよな?ああ、そうか。それなら良かったな」
(・・・女店員?)
見なかったが、「話しかけられるとどうなるのかは知らない方がいい」と言って教えてくれなかった。
別れ際、「それから、もうここには来ない方がいいよ。二度目は酷いらしいから」と言い、族車の兄ちゃんは爆音で去っていった。
(終)