視界の隅でうごめく黒い物体

横目

 

大学に入ってから、

ふと気付いた事があった。

 

大学の講義やバイト、

 

あるいは友人との約束もない

休日というのは、

 

案外と暇なものである。

 

高校時代は部活や塾などで

時間を取られることが多かったからか、

 

それは余計に感じることだった。

 

最近では、それにかこつけて、

昼前まで寝る堕落ぶりを見せている。

 

そんな偶の休日、

 

私は散々読み返した小説を

読んでいた。

 

ぱらぱらと何気なくページを捲り、

 

(展開は当然知っているし、

飽きてきたなあ)

 

などと、

欠伸を噛み殺していると、

 

なにやら視界の隅っこで、

 

黒い物体が動いているのに

気が付いた。

 

襖に張り付いているようなのだが、

それが妙な動き方で、

 

少し動いては止まり、

また動き始めるといった、

 

虫のような奴だった。

 

心なしか、

 

その黒い物体の周囲が

蠢いているようにも見える。

 

だが正直な話、

虫とは考えたくない。

 

ゴキブリ等ならば、

 

どんなに綺麗な家庭にも

居るものだが、

 

さすがにここまで堂々と

していないだろう。

 

それに、

 

もし虫であるならば、

大きさが異常だ。

 

目算で、

 

(とは言え、横目で見ている

から不確かだが・・・)

 

15センチほどはあるのだから、

 

もし虫であったら

私も大暴れするしかない。

 

しかし、

このままでは埒が明かない。

 

(虫じゃあ、ありませんように)

 

などと、

 

完全に怖気付きながらも、

ぱっとそちらを振り返ったのだが、

 

(何も居ないじゃないか・・・)

 

と肩透かしを食らってしまった。

 

先ほどまでは確かに居たように思えた

黒い物体は、

 

その影も形も残していなかった。

 

少し穴の開いた襖が

閉じられているだけである。

 

あまりにも唐突な喪失であって

気持ち悪かったが、

 

追求しても怖いので、

 

私は特に何事もなかったかのように

別の本を読み始めた。

 

わざとらしく、

 

「次はこっちでも読むかなあ」

 

と声を上げたのも、

今思えばおかしなことである。

 

それから30分ほど経ってか、

黙々とページを捲っていると、

 

先の黒い物体がまたも

視界の隅に現れたのだ。

 

やはり虫のように蠢き、

確かな存在感がある。

 

今度はすぐさま振り返ったが、

やはり何も居ない。

 

それがその日だけでも

3回はあったと記憶している。

 

目の具合か、

それとも頭でもおかしくなったのか。

 

前者ならば不安だけで済むが、

 

正直、この手の話は

まず後者を疑われるものだ。

 

それに精神的なものだろうから、

外傷判断も付かない。

 

幸いなことに、

 

目の方はコンタクトの定期検査で

眼科の診断を受ける機会があったのだが、

 

然したる問題は無かった。

 

ならば、

残る可能性は後者なのだが、

 

それは考えないようにしようと思う。

 

いたちごっこになるのは

目に見えているのだ。

 

そうして何日か過ごしているうちも、

 

襖に黒い物体が蠢くことが

時々だがあった。

 

もう前ほどに気にしなくなり、

 

「またか・・・」

 

程度に流せるようになった。

 

しかし、

それが逆に災いした。

 

先日気付いたのだが、

冷静に横目で観察してみると、

 

その黒い物体は虫ではなく・・・

髪のような気がしてきたのである。

 

横目で襖を見てはいけない。

 

私の部屋のタブーである。

 

(終)

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