二人の少年のやり取り
中学の時、
同じクラスにAとBの
二人の男子がいた。
Aは喧嘩が強く、
乱暴なところがあった。
Bは無口で大人しく、
控えめなタイプだった。
ある日、
Aが学校に木刀を持って
登校して来た。
何が目的で持ち込んだのか
定かではないが、
おそらくコレといった
理由はないだろう。
Aはクラスの大人しい
連中を相手に、
寸止めで木刀を
振り回し始めた。
次々と的を変え、
標的をBに定めた。
Bは無言で立ち上がると、
一歩、Aに近付いた。
その時、
Aがピタリと木刀を止め、
「冗談だよ」
とイヤらしく笑った。
・・・しばしの沈黙。
AもBも、
お互いを見つめたまま
動かない。
先にBが視線を外し、
教室から出ようと、
Aに背を向けた。
一呼吸置いて、
Aはイヤらしい笑みのまま、
Bに木刀を振り上げた。
BはAの行動を予想していたのか、
Aの手を掴んだ。
Aはまた「冗談だよ」と言い、
Bは何も言わずに
教室から出ていった。
ひと月後、
Aが学校の屋上から
転落死した。
屋上で何があったかは
分からない。
だが・・・
クラスメイトが参列した
Aの通夜で、
Bが発した「冗談だよ」は、
一生忘れない。
(終)