もてなしされた町のお祭りに参加したら 1/4
生まれは都市圏だけど、
まだ緑が多かった頃なので
遊び場には事欠かなかった。
家の近くに大きな空き地があって、
毎年、そこで盆踊りを
やっていたのを覚えている。
その空き地が潰されて
大きな工場が出来た時、
自分の遊び場所が無くなって、
すごく悲しい思いをした。
そんな頃の話。
小学校の頃はやんちゃだった。
いつも悪戯ばかりして
怒られている様な。
そんな俺と同じように、
やんちゃなNとY。
三人で遊んでいれば、
何でも出来そうな気がしたもんだ。
夏休みのある日、
自転車で川を遡って行って
水の綺麗なところで川遊びをしよう、
ってことになったんだ。
朝から自分たちでおにぎり作って、
水筒に麦茶を詰めて、
リュックを担いで一生懸命に
自転車を漕いでさ。
そういったちょっとした冒険旅行
みたいなことは誰でもするだろ?
俺たちもそう。
それで朝早くから三人集合して、
川を遡ったんだ。
もちろん、
川原を遡っていくのは
無理だから、
川に沿った道を延々と。
時には迷いながら、
2時間ぐらい遡った山の麓で、
ちょっと休憩しよう
ってなったんだ。
もちろんそこは知らない町で、
電柱には五木町って書いてあった。
面白いのは、
同じ色の青い屋根に、
同じ大きさの家がいっぱい
並んでいたのをよく覚えてる。
おかしいな?
とも思ったんだが、
それでも三人いれば楽しくって
気にならなかったな。
自転車を川沿いの道の端に
寄せて止めてから、
俺たちは川原に降りた。
天気は少し曇ってたけれど、
蒸し暑いうえに
自転車を漕いでたせいもあって、
汗でベタベタ。
一刻も早く、川の中で体を
冷やしたいって思って、
川の方へ向かったんだけど、
そこにはその町の住民
らしき人が20人くらい、
大人も子供も集まって、
なんかやってるんだ。
一言も話しをせずに、
黙々と作業をしている感じ。
大人も子供も。
老若男女を問わず。
土を掘ってるように見えて、
何となく異様な光景に、
思わず俺たちの足は
止まってしまった。
そして、
示し合わせたかのように、
一斉にこっちに向けられる
数十の瞳。
今でもハッキリ覚えてる。
その瞳には、こう、
なんて言ったらいいのかな?
生気的なものが無くって、
虚ろな感じだった。
そう思ったか思ってないかのところで、
その集団の中から
小さな女の子の声で、
「・・・のおにいさんが来たね」
って聞こえた。
その瞬間、
ホントに瞬く間に、
今まで生気が無かったのに、
すごく優しい顔になって
話しかけてきたんだ。
「どっから来たんだ?」
とか、
「三人だけで来たのか?
そりゃすごい!」
とか・・・。
俺とNは
そのギャップが怖くなって、
あまり喋る事が
出来なかったんだけど、
人見知りをしないYは、
いつの間にか溶け込んで
笑いながら話しをしている。
周りの住人もニコニコしてるし、
俺たちに疲れただろ?
とか言いながら、
紙コップに入れたお茶とか
お菓子とか出してくれる。
最初は警戒していた俺とNも
段々と慣れてきて、
お茶やお菓子をもらって
色んな話をした。
今日はこの町でお祭りがあるから
良かったら参加していきなさい、
とか言われて喜んでたっけな。
その後、
町の子供たちと
川遊びをして遊んだ。
魚を捕まえたり、
水風船を持って追い駆けっこしたり。
この町のみんなは人懐っこくて、
トイレへ行くにも、
必ず誰かが付いてくる。
だから一人ぼっちになる事がなくて、
楽しく遊べたんだ。
夕方になったので、
そろそろ帰らないといけないと
3人で相談していたら、
住人のおじさんが、
「今日はお祭りがあるから
遊んでいきなさい。
自転車と君たちは、
車で送ってあげるから」
と言われて、
三人でどうしよう?と悩んだ挙句、
その提案を受ける事にした。
遊びの途中で帰るなんて、
その頃は考えられなかったし、
いつも遅くなって親に怒られているので、
慣れていたってのもある。
それを伝えると、
目をまん丸にして「そうかそうか」
って喜んでくれた上に、
「他のみんな(この町の子供)は
法被に着替えてるから、
君たちも着替えるといい」
と赤い法被を3つ、
手渡された。
Tシャツの上から法被を羽織ると
おじさんは、
「よく似合ってるよ。
やっぱり主役はこうでなきゃ」
って褒めてくれたんだ。
その後、
おじさんに連れられて、
町の人でごった返した祭りの会場に
連れて行ってもらったんだ。