もてなしされた町のお祭りに参加したら 2/4

神輿

 

会場には所狭しと

出店が並んでいて、

 

普通であれば、

 

真ん中には櫓(やぐら)

組まれているはずなのに、

 

それは無く、

 

ひな壇みたいなものがあって、

 

その上で太鼓と笛が

小気味良い音を奏でている。

 

そのひな壇の近くに

神輿が大小2つあって、

 

大きい方は15人くらいで

担ぐような神輿で、

 

小さい方はその気になれば

一人でも担げるようなものだった。

 

なんだあれはと思っていると、

 

法被を着た子供たちが、

 

どこからともなくわらわらと

俺たちの周りに寄って来た。

 

総勢で20人くらい居たのかな?

 

高学年の子も低学年の子もいて、

 

みんなニコニコしているんだけど、

みんな法被の色は紺色だった。

 

「俺達と法被の色が違うね?」

 

と言うと、

 

高学年らしい子に、

 

「おにいさんだからだよ!」

 

と言われた。

 

俺より高学年ぽいけど違うのかな

って思ったんだけど、

 

まぁ、いいやって、

子供みんなで遊んでた。

 

出店に行くと、

 

お金は要らんからって、

何でもくれる気前の良さ。

 

俺たちも他の子供も、

 

わたあめを食べたり、

射的したりで、

 

存分に遊ばせてもらった。

 

大人はというと、

 

遠巻きに子供たちを眺めながら

酒を飲んでいる。

 

しばらく遊んで

頃合いとみたのか、

 

さっきのおじさんが

中央のひな壇の上で、

 

大きな声で喋り始めた。

 

一斉に止む、

笛の音や太鼓の音。

 

「それでは、

 

おにいさん祭りを

開催します!

 

という声と共に、

歓喜の声。

 

大人も子供も。

 

俺たちも、

訳も分からずはしゃいでいる。

 

子供たちは全員が

そのおじさんに連れられて、

 

さっきの神輿があったところに。

 

町の子供たちは、

 

あらかじめ場所が決められて

いたかのように、

 

大きな神輿の周りに

順序良く整列した。

 

この神輿はとてもキラキラしていて、

装飾が凄い。

 

もちろん、

子供が持てる大きさなので、

 

テレビなんかで大人が担ぐ神輿に

比べれば大したことはないが、

 

一見して豪華だということは、

子供ながらにも分かった。

 

俺たち三人はどうすればいいのか

分からないのでマゴマゴしていると、

 

さっきのおじさんがやって来て、

 

「ほら、君たち三人は

この小さい方を担いでね」

 

と大きい神輿のすぐ近くにある、

小さい神輿を指差した。

 

近寄って見てみると、

 

細々とした装飾に、

 

屋根の上には炎のような

飾りが付いていて、

 

昔は綺麗だったのだろうが、

今はだいぶ汚れている。

 

泥汚れ?らしきものもあり、

おじさんを振り返ると、

 

「この前の祭りで落としちゃって、

少し汚れてるけど大丈夫だよ」

 

と笑顔で言われ、

 

「なぁんだ」

 

と安心したのを覚えている。

 

配置は、

 

俺が進行方向でいえば

前で担ぐ事になり、

 

Yが左でNが右だった。

 

すると、

おじさんがまた大きな声で、

 

「それでは神輿を担いでくださ~い」

 

と大きな声で指示を出すと、

 

大きな神輿は「エイッ」という

掛け声と共に、

 

子供たちの肩に担がれた。

 

それを見た俺たちも、

 

掛け声を入れつつ

小さな神輿を担ぐ。

 

いや、担ごうとした。

 

その瞬間、

 

見た目と違う重さにビックリして、

神輿を落としそうになった。

 

慌てて駆け寄るおじさんが支えてくれて

落とさずに済んだが、

 

尋常でない重さだ。

 

おじさんの方をチラッと見ると、

 

「ほらほら、頑張って。

周りを5周くらいするだけだからね」

 

と優しく言われたので、

頑張ってみる事にした。

 

両肩が神輿の重さで軋むが、

歩けないほどじゃない。

 

ソロソロとゆっくりではあるが、

三人で時計回りに歩き出した。

 

それと同時に、

 

笛と太鼓の楽しそうな

音色が始まる。

 

いつの間にか大人たちが

近寄って来ていて、

 

「ほらほら、頑張って~!」

 

とか応援してくれる。

 

最初は重さのあまり、

おっかなびっくりだったが、

 

少し慣れてきたのか、

 

歩く速度より少し遅いくらいの

スピードになっていた。

 

この時で半周くらいだったかな。

 

もう少しで1周というところで、

 

突然後ろから『ドン』っと、

押される感じがあった。

 

よたよたと千鳥足になったが、

何とか堪えることが出来た。

 

何があったのかと

後ろを振り返ると、

 

真後ろに大きな神輿を担いだ

子供たちが、

 

ニヤニヤしながら立っていた。

 

どうも、

 

大きな神輿が俺たちの神輿に

追突したみたいだった。

 

一番先頭の子供が、

 

「ごめんね~」

 

と謝ってきたので、

 

「大丈夫~」

 

とだけ返して、

また歩き始めた。

 

ようやく1周。

 

これをあと4週か、と思い、

 

 

少し息を入れたところで、

またもや『ドン』ときた。

 

同じようによろめく

俺達と神輿。

 

後ろを向くと、

 

やっぱり大きな神輿の子供たちが

ニヤニヤしている。

 

一番先頭の子供が、

 

「ごめんね~」

 

とまた謝ってきた。

 

あまり口を利く余裕が

ないほど重いので、

 

軽く頷き、

また歩き始める。

 

いつの間にか、

 

大人たちは近すぎるほど

傍に寄って来ており、

 

手を伸ばせば触れられる

ほどの距離だ。

 

みんな口々に、

 

「頑張れ」

「もう少し」

 

とか応援している。

 

その応援を支えに歩こうと

数歩進んだところで、

 

今までにはないくらいの

激しい『ドン』がきた。

 

(終)もてなしされた町のお祭りに参加したら 3/4へ

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