中学時代の恐ろしく悲しい初恋 2/2

 

翌日、東京に戻り、

紹介された寺を尋ねる。

 

初老の坊さんが俺を見るや否や、

 

かなり強引に手を引いて、

本堂へ連れていかれた。

 

そこで作務衣みたいなものに

着替えさせられ、

 

頭を剃られ、

経を読み上げる。

 

いきなりの展開にビビりながらも、

 

坊さんが真剣なので

それほど事態は深刻なのだと悟り、

 

言われるままにする。

 

一日目は昼から夜の九時位まで、

ずっとそこでお経を上げてもらう。

 

夜は簡素な食事を頂き、

今夜は本堂より一歩も出るなと言われた。

 

夜中、二時位だと思うが、

本堂の戸が突如ドンドンと叩かれる。

 

仏像が揺れるほどの尋常じゃない叩き方で、

外から赤ん坊の泣き声まで聞こえる。

 

恐くてガタガタ震え、

布団を被って去るのを待った。

 

四時頃までそれは続き、

五時に坊さんが来てくれた。

 

俺は夜中の事を尋ねたが、

 

真剣な顔で何か考え込み、

何も教えてくれなかった。

 

六時頃、

 

夏休みだからか、

近所の子がラジオ体操に来ていて、

 

坊さんと参加する。

 

ありえないくらい日常の空気で、

少しほっとした・・・。

 

午前中は境内の掃除を手伝い、

本堂を水拭きする。

 

午後から読経を受け、

また夜が来た。

 

坊さんに、

 

「何があっても戸を開けてはならない」

「例え泣き縋られても決して開けるな」

 

と言われる。

 

眠りについたと同時に、

 

昨晩と同じようにドンドンと

音が始まった。

 

暫らくすると、

ドサっと何か崩れるような音がして、

 

聞き覚えのある声が聞こえた。

 

『なんで弘ちゃん開けてくれないの?』

 

加奈だ・・・。

 

確かに加奈の声がする。

 

膝がガクガク震え、

心臓がバクバク言っているのが分かる。

 

『あけてよ・・・さむいよ・・・』

 

耳を塞ぐが聞こえる声。

 

気がどうにかなりそうだった。

 

朝が近づくにつれ、

声は聞こえなくなった。

 

昨日と同じく、

五時頃に坊さんが来てくれた。

 

緊張から解放されたが、

 

恐怖のあまり、

恥ずかしながら小便を漏らしていた・・・。

 

一週間、お寺で世話になり、

 

最後の夜は、ようやく、

加奈らしきモノは来なくなった。

 

もう命までは取られまいと判断したのか、

坊さんの許しが出て帰ることに。

 

以下、坊さんの話。

 

弘君に分かりやすく言うと、

とても強力な怨霊に取り憑かれていた。

 

あのまま放置していたら、

確実に数か月で連れて行かれた。

 

今後は影響は少なくなるだろうけど、

成仏まではいかなかった。

 

お守りを肌身離さず持っている事。

 

家と部屋の四隅に粗塩を盛り、

入って来れないようにする事。

 

何かあったらすぐに来る事。

 

こうしてその後の約八年は、

ほとんど霊障は現れなかった。

 

ここで、冒頭に書いた、

中学の同窓会に続く。

 

加奈の通夜以来だった同級生と会い、

酒を酌み交わしたのだけれど、

 

自然と加奈の話になった。

 

この話、レイプの件を含め

地元ではタブーとなっていたのだが、

 

加奈の両親は離婚、

名家だった家も売りに出され、

 

今では違う人が住んでいるとの事。

 

お姉さん夫妻は仕事の関係で、

子供を連れ東京に出て来ているとの事。

 

凄く嫌な予感がしたんだけど、

皆には俺にあった事は言わなかったので、

 

「へぇー」

 

と話を合わせるくらいにしていた。

 

この最中、

居酒屋の照明が不意に落ちた。

 

霊だとかの話はしていないので、

 

停電したくらいにしか

皆は思わなかっただろうが、

 

俺には誰の仕業かすぐに分かった。

 

その晩はホテルに泊り、

 

翌朝、親戚の家へ挨拶に行き、

午後には東京へ戻って来た。

 

今は実家を出て一人暮らしなんだけど、

駅を降りて家路に向かう途中、

 

強烈な違和感というか立ちくらみがして、

ガードレールに掴まり座り込んだ・・・。

 

理由はすぐに分かった。

 

道路の反対側に親子連れが

歩いているんだ。

 

加奈の姉さんと旦那。

 

その二人の間に、

遠目でもダウン症と分かる子供。

 

その子が俺を指差しているんだ・・・。

 

幸い、座り込んだおかげで、

姉さん夫妻に俺は見えていないと思う。

 

行き過ぎるのを確認すると、

家に向かって歩く。

 

かなりフラフラする。

 

家に着くなり嘔吐し、

耳鳴りがする。

 

あぁ・・俺もおかしくなったかな・・・

と本気で思った。

 

この大都会でなんちゅう偶然なんだと。

 

考えただけで頭が痛くなってきた。

 

俺、何か悪い事したかな?

何か恨まれる事したのかな?

 

それからは毎日、

そんな事ばかり考えています。

 

霊障はあまりないけど、

 

あの子が俺に向かって指を差していたのは、

絶対に偶然じゃない気がする。

 

目も確かに合ったし、

 

ダウン症だからかも知れないが、

笑っていた。

 

この連鎖を打ち切る為にも、

 

明日にでもお世話になった寺へ

行くつもりです。

 

後日談

夕方、寺に行って坊さんと会うので、

会社を早退させてもらった。

 

寺で経を詠んでもらった一週間は、

本当に尋常では無かったです。

 

俺も極限状態だったので、

 

幻聴や幻影の類だったのかも

知れないですが・・・。

 

数年前、

 

守護霊とか見れる霊能者の人と

話す機会がありましたが、

 

女の子と男性の二体が見えます、

と言われた。

 

あまりいいものじゃないよ、と言われ、

怖くて詳しくは聞きませんでした。

 

小さい頃から霊については

信じている方なので、

 

加奈の事はあり得なくもない話なのですが、

 

血も繋がっていない、

ましてや会った事もない子が、

 

俺を指差して認識するような・・・

そんな事ってあり得ますか?

 

(終)

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