あなたの後ろの人
いわゆる「視(み)える娘」が友人にいる。
その娘の話によれば、一口に
「視える人」といっても、全員が全員
何でも視えるわけでもないらしい。
特に守護霊なんかが視える人は
結構少ないんだそうだ。
逆に、悪霊なんかは視られてナンボの
商売だからほとんどの人が視えるとか。
そんな話を、ファミレスでメシ食いながら
「へぇ~」って感じで聞いてたら、
ちょっとゾッとする話が出てきた。
こんな感じ。
「あ、あの人の『後ろの人』は、
ちょっと控えめだねぇ」
「は?控えめ?」
「そう」
「控えめって、何が控えめ?」
「え~とねぇ、ちょっと離れ気味に歩いてるかな。
繋がりの弱い関係なのかもねぇ」
「ふ~ん、オレにもいるの?『後ろの人』」
「もちろん。今もいるよ」
「どんなん?オレの後ろの席に座ってんの?」
「違うよ?いつも後ろにいるんだよ。
壁があってもいるよ、後ろに」
「よく分かんないな。そもそもさっきの人は
どんなんなんだ?離れてるっていって
どれくらい離れて歩いてんの?」
「え~とねぇ、こんくらい?」
と言って『右手の親指と人差し指』で
間隔を作ってみる。
「・・・ちょっと待って。それで離れてんの?」
「うん、けっこう」
「・・・ちょっと待って。じゃあ普通の人はどうなの」
「え~と、こんくらい」
オレの後ろに回って、『後ろの人』がいるらしき
スペースで、ぱたぱた手を振る。
・・・オレの左肩の上。
「おいっ!」
ついツッコんでしまったが・・・。
いつも、自分の肩の上には、
アゴをのせた『後ろの人』がいるらしい。
自分だけじゃなく、おそらくこれを読んでる
ほとんどの人もそう。
自分は霊なんて全く視えるタチじゃないが、
その話を聞いてから、妙に
左肩の辺りの空気が重くなった気がする。
みんなも自分の顔の横には、
いつも「もう一つ顔」があると思え。
(終)