「見守ってくれてるんかなあ」
ある日、私は地元のメンバーで夜通し楽しんでいた。
そして明け方になり、家の方向が同じ友達のユカ(仮名)と二人で帰っていた時のこと。
横断歩道を渡ろうとした時、私は確かに見た。
横断歩道の向こう側に、お爺さんがニッコリと笑って立っているのを。
田舎の薄暗い明け方・・・。
人の姿も珍しいくらいの時間・・・。
私は横にいるユカを見た。
けれど、ユカは何も気づいていない様子。
私は再びお爺さんを見た。
すると、お爺さんは明らかに私ではなく、横にいるユカを見て笑っている。
なので私はユカに、「知り合い?」と聞いてみた。
けれど、ユカは「何が?」と答えた。
私は指差しながらお爺さんの方を見ると、お爺さんはいなかった。
私は寒気がした。
そして、ユカに話した。
「さっき、あそこにいたお爺さんがユカを見て笑ってたんやって!」
それを聞いたユカは、目を丸くしてこう言った。
「うちのお爺さん、私が産まれる前にここの横断歩道で車に轢かれて死んでん」
・・・私は固まった。
そんな私に対して、ユカは笑顔で言った。
「うちが産まれるん、楽しみにしてたらしい。見守ってくれてるんかなあ」
それを聞いた私は何だか切なくなり、涙があふれた。
考察
どうして血の繋がっている孫には見えず、赤の他人には見えたのだろうか?
それは、お爺さんが孫に姿を見せたくなかった事情や心情があったのかもしれない。
どんなに可愛くても、抱きしめることも頭を撫でてあげることも出来ないのだから。
まして、自分は幽霊。
怖がらせてしまうのではないか、と心配してしまうのも無理もない。
(終)