狸は化けない。化けているのは・・・
まだ曾婆さんが生きていたので、
確か幼稚園の頃だと思う。
曾婆さんの家があるのは、
観光にも狸(たぬき)を利用しているほど
県内では狸で有名な土地で、
もちろん今でも狸は良く出る。
狸を扱った絵本なども出ており、
俺はそれが大のお気に入りだった。
そんなある日、
曾婆さんの家へ遊びに行った時に、
俺は曾婆さんに訊いてみた。
狸の町に住む曾婆さんによると・・・
俺「狸って化けるって本当?」
婆「狸は化けねな」
俺「えー?!」
夢を壊され、ふて腐れかけていたら、
曾婆さんが続けて言った。
婆「狸は化けねども、
なんかしかが狸に化ける」
俺「狸に?」
婆「おめ、動物園の狸が
化けるの見たこどあっか?」
俺「なーい」
婆「狸は化けね。
ケモノっこだもの。
化けらぁずはバケモノよ。
バケモノがケモノさ化けらぁずや」
俺「バケモノが狸に化けるの?」
婆「狸だけでね。
けづねさも、いたぢさも、
いぬさも化ける。
人さもな」
俺「・・・」
婆「んだがら○○ちゃん(俺)、
おがさんがたのゆごどきがねば、
バケモノよってくど」
(お母さん方の言うこと聞かねば、
バケモノ寄って来るぞ)
最後の言葉は俺を戒めるために
言ったのだろうが、
バケモノはケモノに化けるからバケモノだ、
という言葉が心に残って仕方ない。
(終)
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