一人暮らしを始めて3日目のことでした 2/2

マンション

前回までの話はこちら

ズカズカと部屋に上がり込み、

ありとあらゆるドアを開けまくり、

 

ベランダも押し入れも

全てのドアを開け放して、

 

私の居るリビングに来ました。

 

これで気が済んで帰ってくれるものだと

私は思っていました。

 

リビングに座り、「主人を返して!」と、

今度は泣きながら訴えてきました。

 

私は何度も何度も、

 

「間違いです。

 

私は3日前・・・正確には4日前に

こちらへ入居したばかりですので、

 

あなたのご主人なんて知りません!」

 

と言い続けました。

 

ですが・・・

 

とうとう土下座までして「主人を返して!」

と言い出しました。

 

私はとても怖くなりました。

 

勘違いとはいえ、

 

他人の家に子連れで、

しかも土足で入り込んで来ては、

 

泣くわ、喚くわ、

挙句の果てには土下座までして・・・

 

「そんなに大事なダンナなら、

首に縄でも付けとけばいいでしょ!!」

 

思わずキツク言ってしまいました。

 

「あなたはとても綺麗ね・・・

それに若い・・・おしゃれだし・・・

 

私には無いものを全て持っている・・・

 

あなただったら男の人なんて

いくらでも寄り付くでしょう?

 

私の主人なんか、

取るに足らないでしょう?

 

だったら、

さっさと返してくれても良いでしょう?」

 

「そう言われても、

本当に私は無関係なんです!

 

そりゃ、あなたには同情しますけど・・・」

 

その女性は静かに泣き始めました。

 

これだけ大騒ぎしていたにも関わらず、

子供達はぐっすり眠っています。

 

(どこまでいっても平行線だな・・・)

(もう、明日にして欲しい・・・)

 

内心、そう思っていました。

 

そんな気持ちが顔に出ていたのか、

 

ふいに女性は立ち上がって、

ゆっくりと子供達を抱き上げ、

 

ベランダの方へフラフラと歩き始めました。

 

(・・・何をするんだろう?)

 

じーっと見ていると、

 

女性はベランダへ出て子供を一人、

下に投げ落としました。

 

その瞬間がスローモーションのように、

私にはゆっくりと長い時間に思えました。

 

ドサッ!!

 

私は慌ててベランダへ行き、

下を覗き込みました。

 

当たり前ですが、

子供が頭から血を流して倒れていました。

 

「何をしているの!

救急車!!救急車!!」

 

私は叫びながら、

側にあった電話の受話器を取りました。

 

女性を横目で見ながら電話をしていると、

今度は物凄く大きな音がしました。

 

・・・なんと、

 

もう一人の子供も、

落とそうとしているではありませんか!

 

私は受話器を放り投げ、

慌ててベランダへ走り寄りました。

 

しかし遅かった・・・

 

子供は一足違いで投げ落とされてしまいました。

 

女性は笑いながら私の顔を覗き込み、

手すりから身を乗り出して、

 

「これで、あなたの罪は一生消えない」

 

と言い残すと、

自らも飛び降りました。

 

私は部屋の中に居るのが怖くなり、

 

人だかりが出来るであろう、

親子が飛び降りた場所へ駆けつけました。

 

マンションの玄関からちょうど8階上が

私の部屋のベランダです。

 

玄関を出ると、

そこにあるはずの親子の体を探しました。

 

しかし・・・

見つかりませんでした。

 

そんなはずはありません。

 

確かに私の目の前で、

二人の子供を次々に投げ落とし、

 

自分も飛び降りたのです。

 

マンションの周りも探し回りましたが、

見つかりませんでした。

 

何が何だか訳が分からなくなり、

私は部屋に戻りました。

 

腑に落ちなくて、

仮眠もせずに朝を迎えました。

 

その日は休日でした。

 

いつもならゆっくりと

お昼頃まで寝ているのですが、

 

昨夜のこともあり、

 

朝9時に管理人室のカーテンが開くのと同時に

管理人を捕まえました。

 

なぜなら、

 

私の部屋”803号室”の前の住人や、

このマンションについて詳しく聞くために。

 

昨夜のことを管理人に説明しましたが、

 

管理人はシラを切るだけで、

何も教えてはくれませんでした。

 

不動産屋と管理会社のどちらにも

電話をしましたが、

 

何も聞けませんでした。

 

ただ・・・

 

お隣に引越しのご挨拶に伺った時に

そこの奥さんが、

 

「あなた、お一人で住まわれるのですか?」

 

と、薄ら笑いを浮かべていたことを

ふと思い出しました・・・

 

(終)

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