雀塚という古墳にまつわる話
東北地方の民族文化を研究している大学教授が雑談として話してくれた事だが、東北地方には『雀塚(すずめづか)』と呼ばれる古墳がいくつかあるらしい。
何も、雀を弔っている訳ではなくて、子供を弔っている。
どういう事だろうと思っていると、なんでも昔から飢饉や食料不足になると”口減らし”をしていたという。
※口減らし
養うべき家族の人数を減らすこと。
長男は家督を継ぎ、女の子は女郎として遊郭に売れるからいいのだが、長男以外の息子(次男や三男)なんかは、居てもしょうがない存在になるそうだ。
それで、飢饉や食料不足になると村の大人達が口裏を合わせ、ある晩にある事を決行する。
それは、子供達が寝静まった頃、一軒一軒大人達が回って、次男以下の男の子を総出で抱きかかえ、村の近くに掘った深い穴に投げ込むそうだ。
投げ込まれた男の子達は、そこで自分の運命に気付く。
最初の数日は助けを求める声がして来るのだが、誰も素知らぬ顔をし、でもそれが段々と小さくなって聞こえなくなったら穴を埋めに行く。
が、その時にはまだ数人は生きている。
なぜなら、”共食い”をしているからだ。
それでもいずれは死んでしまい、大人達は穴を埋めて『塚』にする。
彼らの魂が鎮まるように・・・と。
それが『雀塚』である。
そのおかげで食料不足は越えられるのだが、それをやってしまうと、なぜかその集落はそれから男の子が生まれなくなって、集落はいずれ無くなってしまう。
そういった集落がたくさん出てきたらしく、皆は考えた。
長男の名前に似た名前を一つ考えて、次に生まれた女の子に少し変えて名前を付けた。
長男が「かずあき」なら、女の子は「かずこ」、というように。
その女の子を次男以下の男とみなし、遊郭にも売らず大切に育てた。
なんでも気の持ちようで、それで大丈夫だろうと思うと、普通に男の子も生まれるようになったという。
教授は、「埋められた子供達の呪いなんかではない」と言っていたが・・・。
なので、もし自分の名前と妹の名前が似ているなと思ったら、それは雀塚の集落の名残かも知れない。
(終)