韓国での生活が1年を過ぎた頃

扉

 

今から15年も前の話。

 

当時、私は大学には進学せず、夜の世界で働いていた。

 

同じ頃、韓国に従兄弟が日本料理店をオープンさせていて、想像以上に賑わいをみせた為、私に「手伝いに来てくれないか?」と相談された。

 

特に将来設計があったわけでもなく、日本にこだわる必要もないと感じた私は、親に許可を得て従兄弟からの申し出を受け、早々に韓国へと向かった。

スポンサーリンク

部屋で男が自殺していた

店は明洞(ミョンドン)という場所にあり、私は従兄弟が借りてくれたアパートに荷を降ろした。

 

店までは15分ほどの距離だが、夜でも人通りがあるので危機感もない。

 

昼間は韓国語を勉強し、夜は厨房で汗を流す。

 

こんな人生も悪くないと充実感を感じながら過ごして、気付けば1年が経っていた。

 

日常会話程度に韓国語をマスターしていたし、地理にも詳しい。

 

相変わらず忙しい店では厨房長という立場になった。

 

そんなある日、アパートに帰ると使ってもいない洋服が床に散らばっていた。

 

そればかりか、コルクボードに貼っていた写真が1枚もない。

 

ゾッとしたのは、私の下着がケースから1枚ずつ玄関の方へ点々と置かれていた。

 

大きな違和感を感じて、従兄弟に電話をかける。

 

「今日、兄ちゃんか兄ちゃんの奥さん、うちに来た?」

 

答えはノー。

 

奥さんは妊娠中で身重だし、従兄弟は私より長い時間店にいる。

 

分かりきっていた事だが、もしかしたら・・・?と安心を得たくて聞いたのだが、身内は誰も部屋に来ていないようだった。

 

そう考えると一気に怖くなった私は、従兄弟に頼んで警察を呼んでもらい、盗まれた物もなかったので、「何かあればまた呼んで下さい」という形で警察も帰って行った。

 

不安で堪らず、その日は従兄弟夫婦の家に泊まる事にした。

 

翌日、仕事が終わり自分のアパートへ一人で戻るのが怖かった私は、日本に留学経験のあるミジュというアルバイトに、「一晩だけうちに泊まってくれないか?」と頼んだ。

 

ミジュは快く付いて来てくれたのだが、談笑も束の間、部屋の前で私たちは凍りついた。

 

アパートの私の部屋の扉に、赤のスプレーで『立入禁止』と殴り書きされていた。

 

「○○ちゃん・・・これヤバいんじゃない?」と、ミジュも怯え出し、私たちはアパートから少し離れた場所で警察に連絡した。

 

警察が到着し、異様な空気を察したのか、特殊部隊のような人達も数名応援に駆け付けた。

 

離れて待つように言われ、ミジュとしばらくアパートの下で待っていると、刑事のような人が私たちの元へ来て、深刻な顔付きで何かを話した。

 

難しい単語が分からずミジュに通訳を頼むと、ミジュはあからさまに青ざめた顔で、「話したら私はもう帰るから、社長(従兄弟)に迎えに来てもらうよう、○○ちゃん今すぐ電話して」と、前置きをした。

 

不穏に包まれながら従兄弟に電話をかけて、ミジュに従兄弟がすぐに向かうと説明すると、ミジュは今にも泣き出しそうな顔で歯をガチガチ震わせながら話し出した。

 

「○○ちゃんの部屋で男が自殺してるみたい・・・。刑事は顔見知りか聞いていて、確認して欲しいので○○ちゃんに部屋に上がるようにと言ってる」

 

頭が真っ白になり、一瞬にして溢れ出る恐怖で言葉も出ず、「とりあえず確認は従兄弟が来てからでも構わないか?」と伝え、刑事に承諾を得るとミジュはタクシーを拾い、逃げるように帰って行った。

 

しばらくして従兄弟が来たので、刑事と3人で私の部屋へ入る。

 

すでに何とも形容し難い異臭が鼻をつき、”それ”を見た私は床に嘔吐した。

 

横目でもう一度確認して、”それ”が誰なのか見当がついた。

 

私が店に入って間もない頃から、頻繁に来てくれていた常連客。

 

名前も素性も知らないが、思い返せば何度か食事に誘われ断っていた。

 

私が思い当たる事の全てを従兄弟の通訳で刑事に伝え、その夜は必要最低限の着替えや鞄だけを持ち、従兄弟宅で寝る事になった。

 

翌日、精神面で辛いだろうと休みをもらい、従兄弟の奥さんと昨夜の話をしていると、奥さんが話しづらそうにこんな事を言った。

 

「実は、あの常連客は何度も執拗に、○○ちゃんと交際がしたいから取り持ってくれと旦那に頼んでたみたいなの。もちろん旦那は、○○ちゃんに迷惑が掛かるだろうと軽くあしらってたみたいで・・・」

 

その後、私は周りのサポートも度外視し、半月もせずに日本に帰国した。

 

それでも死体の顔が鮮明に何度もフラッシュバックするし、あの時、もし鉢合わせていたらと思うと、未だに眠れない夜がある。

 

(終)

スポンサーリンク

One Response to “韓国での生活が1年を過ぎた頃”

  1. 匿名 より:

    キムチ悪い話しだね

コメントを残す


↓↓気が向けば下のアイコンを応援(タップorクリック)していってください♪
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 心霊・怪談へ (ブログランキングに参加しています)
サブコンテンツ

月別の投稿表示

カレンダー

2017年12月
« 11月    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  
特定のキーワードからサイト内の記事を検索するには、すぐ下の「検索窓」からキーワードを直接入力してご利用ください。
アクセスランキング

このページの先頭へ