早死にしてしまう家系
俺がまだ幼かった頃、向かいの家は婆さんとA子さんの二人暮らしだった。
A子さんは当時高校生くらいだったのか、とても綺麗な人だったように記憶している。
そのうちA子さんが結婚して、婿養子をもらったという話を聞いた。
後に俺がばあちゃんから聞いた話なのだが、どうやらA子さんの家は『早死にする家系』だったらしい。
子供が生まれるも、みんな早死にしてしまう。
そして向かいの家の婆さんもA子さんは、二人とも”養女”だった。
逃れられない宿命
やがて俺が中学生になった時、ある晩騒がしくて目が覚めた。
隣の家の車庫と車が燃えていた。
どうやら何者かによる放火らしかった。
事件はこれで終わらず、その後に連続放火事件へと発展した。
たしか最初の火事の後も二件ほど火事が続き、四件目はボヤ程度で消し止められた。
その後しばらくは平穏な日々が続いたのだが、俺が大学生になった頃に再び火事が起きた。
向かいのA子さんの家が全焼したのだった。
当時は随分と俺の親父も警察に疑われたらしい。
そして後日、久しぶりに帰省した時に、親父から聞いた事実は衝撃的だった。
「例の一連の火事の犯人はな、どうもA子らしいんだわ。四件目のボヤ騒ぎの時に目撃された犯人らしき人物がA子だったんだ。警察には誰も言っていないが、ここらの者もみんなA子の仕業だったってことで納得してる。最後は自分の家に火つけてしもうたんだな」
そして、これは先日ばあちゃんに聞いた話。
俺「建て直したA子さんの家、今は誰が住んでんの?」
ば「ああ、もう今は誰も住んでないんだわ。みんな死んでしもうたからね」
俺「は?みんなってどういうこと?」
ば「みんなだよ。婆さんもA子も旦那さんも病気で亡くなった。子供もいたけど体育の授業だか部活動の最中に事故で亡くなってしもうたんだよ」
逃れられない宿命というのか血の業とか、人間が壊れていく様みたいなものを見せつけられたようでゾッとした。
(終)