鉱山で人が死んだ時、遺体には二度語りかける
97歳のおじいちゃんに聞いた、鉱山での体験話。
おじいちゃんは若い頃、財閥系の鉱山で働いていた。
そこでは事故死が多く、週に一度は人死にが出ていたという。
そんな時、役付きだったおじいちゃんは、鉱夫の暮らす長屋の一番端の部屋で弔辞を読まなければならなかった。
それが辛くて仕方なかったそうだ。
たとえ坑道で落盤があっても、二次災害の恐れも高く、救助はほとんど行われない。
即死の場合は良いのだが、入り口だけ崩れて中で存命な時もある。
そんな時は空気穴のパイプを伝って、中の人が助けを求めてパイプを叩く。
『カンカン・・・カンカン・・・』という音が何日も聞こえていたそうだ。
その鉱山にまつわる怪談話は多いが、世に余り知られないまま消えているらしい。
その内の一つを紹介する。
鉱山では落盤などにより人が死ぬと、遺体をそのまま地上には引き揚げない。
遺体を担架に乗せて運び出す前に、必ず二度、遺体に向かって語りかけるように声をかけるのだそうだ。
「今から○○を家に帰すぞー。○○を家に帰すぞー」という風に。
坑道には幾つかの分岐があり、各分岐には名称が付いている。
そこで遺体の運搬を止めて休憩する時も、「△△に着いたぞー。△△に着いたぞー」と二度呼びする。
こうして坑道途中での休憩が終わると、再び「また上に向かうぞー。上に向かうぞー」と二度呼びする。
こうしておかないと死人の魂がそこに留まり、幽霊となって悪さをするという。
遺体を運ぶ時は一声では決してダメで、死人の魂に聞こえるように二度同じ言葉を繰り返し言うのだという。
(終)