私は病気にかかった人の匂いがわかる
私は匂いに敏感すぎる人間で、ただ単に異臭云々ではなく、病気にかかった人の匂いがわかる。
小さいものでは風邪や水虫などで、大きいものだと鬱やガン、初期の糖尿病や大腸炎、血栓や心筋梗塞寸前、脳梗塞直後の人なんかを判別したことがある。(私は大勢と接する仕事をしているので)
そこに臭気があるというより、雰囲気が匂いの感覚として伝わると言った方がいいかもしれない。
以前に自分が言うのを躊躇(ためら)った為に、手遅れで亡くなってしまった人がいて以来、ちょっと変わった人だと思われても教えるようにしている。
他にも、病気ではないが嘘つきや流産、過去に中絶した人の匂いもわかる。
今でも私は恨まれている
5年前に義弟の妻になった由香(仮名)は近所に住んでいて、私たちはとても仲が良く、お互いの子供たちも仲良しで楽しく過ごしていた。
そんな由香から、一昨年あたりから急にガンの匂いがし始めた。
でもその匂いは由香自身から出ているわけではなく、義弟以外の誰かの匂いだった。
それに、由香は仕事をしていなかったので、外に出ることもあまりなかった。
私が匂いに敏感な時期も、子供を産んでからは少し鈍くなったので、大丈夫だろうと特に気に留めないでいた。
それからしばらくした頃、私の子供が「さくらちゃん、くさい!くさい!くさい!」と叫ぶようになった。(さくらちゃんは由香の娘で仮名)
私の子供があまりに言うものだから、さくらちゃんは泣き出してしまい、由香もかなり怒ってしまった。
以来、私たち家族とは遊ばなくなってしまった。
私は自分が感じていた匂いがさくらちゃんからではないか?と思い、夫経由で義弟に「さくらちゃんはガンじゃないかな?」と話してもらった。
すると、義弟も激怒してしまった。
もともと私の話に眉唾だった義理の両親からも叱られて、義弟の家族は引っ越して隣の市に行き、携帯の番号も変えられて完全に絶縁されてしまった。
その後、さくらちゃんは小児ガンで亡くなった。
夫だけが告別式に呼ばれたけれど、由香が見るに耐えられないくらいやつれていたという。
そして、今でも由香は私を恨んでいるのが夫の匂いから伝わった。
なんとなく私の子供は空気を察してしまって、夜泣きとおねしょが止まらなくなった。
今はあなたは悪くないと言い聞かせるしかないけれど、亡くなったさくらちゃんも私の子供も気の毒で後悔しかない。
(終)
能力の継承…だと…?!