あの骨壷を見てから異常なほど転ける
これは、母とお墓参りに行った時の話です。
帰りに、水汲み場に残ったお水を捨てに行き、バケツを返していました。
すると母が、「天気が悪くなってきたから早く帰ろう」と私に声をかけました。
私は『分かった』と返事をしようと母の方へ顔を向けようとしたところ、なぜかゴミ捨て場の裏を覗くような動きをしたのです。
そこには、骨壷を収めた箱がポツンと置いてありました。
あんたは気づいてくれたから
私は思わず、「うわっ、骨壷や!」と声をあげました。
母は「見なかった事にして早く帰ろう」と、さっさと霊園を出て行きました。
私も慌てて駐車場に向かいました。
それからというもの、やたらと転(こ)けるのです。
“何もないのにつまづく”という事を繰り返しました。
平坦な道路や横断歩道、それに階段と、あらゆる所で転びます。
とにかくその数が尋常ではありません。
私は『変なのがまた憑いたのかな?』と思い、地元の神社にお参りをしようと向かいました。
以前にその神社の先生から、「神社の鳥居を一杯くぐりなさい。悪いものを祓ってくれるから」と言われていたのを思い出し、悪いものが憑いていたら取れるだろうと考えたからです。
しかし、神社に着いてさっそく鳥居をくぐろうとするも、階段の真ん中あたりで大きな蜂に邪魔をされて参拝できません。
私が階段から離れると、その蜂の姿も見えなくなるのですが、近づくとまた姿を現します。
これは何かに邪魔されているのかな?と思った私は、先生に直接連絡を取ってもらいました。
今回は先客がいなかった為、すぐに左の部屋に通されました。
そして、「異常なほど転けるんです」と、先生に最近の事を伝えました。
神社に入れなかった事や、鳥居をくぐることも出来なかった事も伝えました。
すると先生は一息吸うと、「背中をこちらに向けて、手は胸元で合わせ目を瞑るように」と言われ、しばらく呪文のようなものを唱えていました。
30分程そうしていたでしょうか。
私はその間、随分と長いなぁと考えていました。
そして突然、「はい、終わった」と先生は言われました。
続けて、「あんた骨壷を拾ったか?」といきなり言われました。
私は「霊園のゴミ捨て場で見かけました」と答えると、「その人が付いて来ていた。どうして供養してくれないのか、と」。
実は、先生に言われるまで骨壷の事は忘れていたので本当に驚きました。
おかしな現象が起きていたキッカケはあの骨壷の箱でしょうが、それを見たのも一瞬だったし、母の『見なかった事』の発言で、私自身もあまり意識していませんでした。
以下、先生との会話です。
私「えっ!?あんな一瞬で?」
先生「あんたは気づいてくれたから、供養してくれると思ったらしい」
私「気づく?」
先生「たぶん、誰彼関係なしに呼んで、あんたは反応した。意識しないでゴミ捨て場の裏を覗いたやろ?」
私「転けたのは何でですか?」
先生「生前は足を悪くしていたようで、気づいて欲しかったからや。あんたが自分に気づかないからどんどん転ばした、と」
私「あの蜂もですか?」
先生「蜂は関係ない。偶然や」
そして最後に先生は、「これからそういうものを見かけたら、その場で『さよなら』と声に出して帰りなさい」と教えられました。
(終)