ヒッチハイク中に出会ったキャンピングカー 4/7

ひとしきり爆笑した後、

森独特のむせ返る様な濃い匂いと、

周囲が一切見えない暗闇に、

現実に戻された。

 

変態一家から逃げたのは良いが、

ここで遭難しては話にならない。

 

樹海じゃあるまいし、

まず遭難はしないだろうが、 

万が一の事も頭に思い浮かんだ。

 

「朝まで待った方が良くないか?

さっきのババァじゃないけど、

熊まではいかなくとも、野犬とかいたらな・・・」

 

俺は一刻も早く下りたかったが、

 

真っ暗闇の中をがむしゃらに進んで、

さっきの川原に戻っても恐ろしいので、

 

腰を下ろせそうな倒れた古木に座り、

休憩する事にした。

 

一時は、お互い、あーだこーだと

喋っていたが、

 

極端なストレスと疲労の為か、

お互いにうつらうつらと

意識が飛ぶようになってきた。

 

ハッと目が覚めた。

反射的に携帯を見る。

 

午前4時。

 

辺りはうっすらと

明るくなってきている。

 

横を見ると、カズヤがいない。

 

一瞬パニックになったが、

俺の真後ろにカズヤは立っていた。

 

「何やってるんだ?」と聞く。

 

「起きたか・・・聞こえないか?」

 

と、木の棒を持って、

何かを警戒している様子だった。

 

「何が・・・」

 

「シッ!」

 

微かに遠くの方で音が聞こえた。

 

口笛だった。

ミッ○ーマ○スのマーチの。

 

CDにも吹き込んでも良いくらいの、

良く通る美音だ。

 

しかし俺達にとっては、

恐怖の音以外の何物でもなかった。

 

「あの大男の・・・」

 

「だよな」

 

「探してるんだよ、俺らを!!」

 

再び俺たちは、猛ダッシュで

森の中へと駆け始めた。

 

辺りがやや明るくなったせいか、

以前よりは周囲が良く見える。

 

躓いて転ぶ心配が減ったせいか、

かなりの猛スピードで走った。

 

20分くらい走っただろうか。

少し開けた場所に出た。

 

今は使われていない

駐車場の様だった。

 

街の景色が、木々越しに

うっすらと見える。

 

だいぶ下って来れたのだろうか。

 

「腹が痛い」

と、カズヤが言い出した。

 

我慢が出来ないらしい。

 

古びた駐車場の隅に、

古びたトイレがあった。

 

俺も多少もよおしてはいたのだが、

大男がいつ追いついて来るかもしれないのに、

個室に入る気にはなれなかった。

 

俺がトイレの外で目を光らせている隙に、

カズヤが個室で用を足し始めた。

 

「紙はあるけどよ~ガピガピで、

蚊とか張り付いてるよ・・・うぇっ。

無いよりマシだけどよ~」

 

カズヤは文句を垂れながら、

糞も垂れ始めた。

 

「なぁ・・・誰か泣いてるよな?」

 

と、個室の中から大声で

カズヤが言い出した。

 

「は?」

 

「いや、隣の女子トイレだと思うんだが・・・

女の子が泣いてねぇか?」

 

カズヤに言われて初めて気がつき、

聞こえた。

 

確かに、女子トイレの中から

女の泣き声がする・・・

 

カズヤも俺も黙り込んだ。

 

誰かが女子トイレに入っているのか?

何故、泣いているのか?

 

「なぁ・・・お前確認してくれよ。

段々、泣き声酷くなってるだろ・・・」

 

正直、気味が悪かった。

 

しかし、こんな山奥で、

女の子が寂れたトイレの個室で

一人泣いているのであれば、

何か大事があったに違いない。

 

俺は意を決して女子トイレに入り、

泣き声のする個室に向かい、声をかけた。

 

「すみません・・・どうかしましたか?」

 

返事はなく、

まだ泣き声だけが聴こえる。

 

「体調でも悪いんですか、

すみません、大丈夫ですか」

 

泣き声が激しくなるばかりで、

一向にこちらの問いかけに

返事が返ってこない。

 

その時、駐車場の上に続く道から

車の音がした。

 

「出ろ!!」

 

俺は確信とも言える

嫌な予感に襲われ、

 

女子トイレを飛び出し、

カズヤの個室のドアを叩いた。

 

「何だよ」

 

「車の音がする、万が一の事もあるから

早く出ろ!!」

 

「わ・・・、わかった」

 

数秒経って、カズヤが青ざめた顔で

ジーンズを履きながら出て来た。

 

と同時に、駐車場に下って来る

キャンピングカーが見えた。

 

「最悪だ・・・」

 

今、森を下る方に飛び出たら、

確実にあの変態一家の視界に入る。

 

選択肢は唯一死角になっている、

トイレの裏側に隠れる事しかなかった。

 

女の子を気遣っている余裕は消え、

俺達はトイレを出て、

裏側で息を殺してジッとしていた。

 

頼む、止まるなよ。 

そのまま行けよ、そのまま・・・

 

「オイオイオイオイオイ、

見つかったのか?」

 

カズヤが早口で呟いた。

 

キャンピングカーのエンジン音が、

駐車場で止まったのだ。

 

ドアを開ける音が聞こえ、

トイレに向かって来る足音が

聞こえ始めた。

 

このトイレの裏側は、

すぐ5メートル程の崖になっており、

 

足場は俺達が立つのがやっとだった。

 

余程何かがなければ、

裏側まで見に来る事はないはずだ。

 

もし俺達に気づいて

近いづいて来ているのであれば、

 

最悪の場合、

崖を飛び降りる覚悟だった。

 

飛び降りても怪我はしない程度の崖であり、

やれない事はない。

 

(続く)ヒッチハイク中に出会ったキャンピングカー 5/7へ

スポンサーリンク

コメントを残す


↓↓気が向けば下のアイコンを応援(タップorクリック)していってください♪
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 心霊・怪談へ (ブログランキングに参加しています)
サブコンテンツ

月別の投稿表示

カレンダー

2017年12月
« 11月    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  
特定のキーワードからサイト内の記事を検索するには、すぐ下の「検索窓」からキーワードを直接入力してご利用ください。
アクセスランキング

このページの先頭へ