ヒッチハイク中に出会ったキャンピングカー 5/7

用を足しに来ただけであってくれ、頼む・・・

俺達は祈るしかなかった。

 

しかし、一向に女の子の泣き声が

止まらない。

 

あの子が変態一家に、

どうにかされるのではないか?

 

それが気が気でならなかった。

 

男子トイレに誰かが入って来た。

声の様子からすると父だ。

 

「やぁ、気持ちが良いな。

ハ~レルヤ!!ハ~レルヤ!!」

 

と、どうやら小の方をしている様子だった。

 

その後すぐに、個室に入る音と

足音が複数聞こえた。

 

双子のオッサンだろうか。

 

もはや女の子の存在は、

完全にバレているはずだった。

 

女子トイレに入った母の、

「紙が無い!」

と言う声も聞こえた。

 

女の子はまだ泣きじゃくっている。

 

やがて父も双子のオッサンたち(恐らく)も、

トイレを出て行った様子だった。

 

おかしい。

 

女の子に対しての、

変態一家の対応が無い。

 

やがて母も出て行って、

変態一家の話し声が遠くになっていった。

 

気づかないわけがない。

現に女の子はまだ泣きじゃくっているのだ。

 

俺とカズヤが怪訝な顔をしていると、

父の声が聞こえた。

 

「~を待つ、もうすぐ来るから」

 

と言っていた。

 

何を待つのかは聞き取れなかった。

 

どうやら双子のオッサンたちが、

グズッている様子だった。

 

やがて平手打ちの様な音が聞こえ、

恐らく双子のオッサンの泣き声が聞こえてきた。

 

悪夢だった。

 

楽しかったはずのヒッチハイクの旅が、

なぜこんな事に・・・

 

今まではあまりの突飛な展開に

怯えるだけだったが、

 

急にあの変態一家に対して

怒りが込み上げてきた。

 

「あのキャンピングカーをブン取って、

山を降りる手もあるな。

あのジジィどもをブン殴ってでも。

 

大男がいない今がチャンスじゃないのか?

待ってるって、大男の事じゃないのか?」

 

カズヤが小声で言った。

 

しかし、俺は向こうが俺達に

気がついてない以上、

 

このまま隠れて、奴らが通り過ぎるのを

待つ方が得策に思えた。

 

女の子の事も気になる。

 

奴らが去ったら、ドアを開けてでも

確かめるつもりだった。

 

その旨をカズヤに伝えると、

しぶしぶ頷いた。

 

それから15分ほど経った時。

 

「~ちゃん来たよ~!(聞き取れない)

 

母の声がした。

 

待っていた主が、

駐車場に到着したらしい。

 

何やら談笑している声が聞こえるが、

よく聞き取れない。

 

再び、トイレに向かってくる

足音が聞こえてきた。

 

ミッ○ーマ○スのマーチの口笛。

アイツだ!!

 

軽快に口笛を吹きながら、

大男が小を足しているらしい。

 

女子トイレの女の子の泣き声が

一段と激しくなった。

 

何故だ?

何故気づかない?

 

やがて泣き叫ぶ声が

断末魔の様な絶叫に変わり、

フッと消えた。

 

何かされたのか?

見つかったのか!?

 

しかし、大男は男子トイレにいるし、

他の家族が女子トイレに入った形跡も無い。

 

やがて、口笛と共に

大男がトイレを出て行った。

 

女の子がトイレから連れ出されては

しないか、と心配になり、

 

危険を顧みずに、一瞬だけトイレの裏手から

俺が顔を覗かせた。

 

テンガロンハットにスーツ姿の、

大男の歩く背中が見える。

 

「ここだったよなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ふいに大男が叫んだ。

とっさに俺は頭を引っ込めた。

 

ついに見つかったか!?

カズヤは木の棒を強く握り締めている。

 

「そうだそうだ!!」

 

「罪深かったよね!!」と、父と母。

 

双子のオッサンの笑い声。

 

「泣き叫んだよなぁぁぁぁぁ!!」と大男。

 

「うんうん!!」

 

「泣いた泣いた!!悔い改めた!!

ハレルヤ!!」と、父と母。

 

双子のオッサンの笑い声。

 

何を言っているのか?

どうやら、俺達の事ではないらしいが・・・

 

やがて、キャンピングカーのエンジン音が

聞こえ、車は去って行った。

 

辺りはもう、完全に明るくなっていた。

 

変態一家が去ったのを確認して、

俺は女子トイレに飛び込んだ。

 

全ての個室を開けたが、誰もいない。

 

鍵も全て壊れていた。

そんな馬鹿な・・・

 

後から女子トイレに入って来たカズヤが、

俺の肩を叩いて呟いた。

 

「なぁ、お前も途中から

薄々は気がついてたんだろ?

 

女の子なんて、

最初からいなかったんだよ」

 

2人して幻聴を聞いたとでも

言うのだろうか。

 

確かに、あの変態一家の女の子に対する

反応が一切無かった事を考えると、

 

それも頷けるのではあるが・・・

 

しかし、あんなに鮮明に聞こえる幻聴など

あるのだろうか・・・

 

(続く)ヒッチハイク中に出会ったキャンピングカー 6/7へ

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