いわくつきの呪われた怖い話 2/2

御札

 

それから裏の山に上がって

神社の社務所に行くと、

 

中年の小さいおばさんが、

白い服を着て待っていました。

 

めちゃめちゃ怒られたような気もしますが、

 

それから後は、

逃げた安堵感でよく覚えていません。

 

次の日から、

Aが学校に来なくなりました。

 

私の家の親が神社から呼ばれたことも

何回かありましたが、

 

詳しい話は何もしてくれませんでした。

 

ただ、山の裏には絶対行くな、

とは言われました。

 

私たちも、

 

あんな恐ろしい目に遭ったので、

山など行くはずもなく、

 

学校の中でも、

小さくなって過ごしていました。

 

期末試験が終わった日、

生活指導の先生から呼ばれました。

 

今までの積み重ねをまとめて大目玉かな、

殴られるなと覚悟して進路室に行くと、

 

私の他にもBとDが座っています。

 

神主さんも来ていました。

 

生活指導の先生などいません。

 

私が入ってくるなり、

神主さんが言いました。

 

「あんなぁ、Cが死んだんよ」

 

信じられませんでした。

 

Cが昨日学校に来ていなかったことも、

その時に知りました。

 

「学校さぼって、

 

こっちに括っとるAの様子を

見に来よったんよ。

 

病院の見舞いじゃないとやけん、

危ないってわかりそうなもんやけどね。

 

裏の格子から座敷のぞいた瞬間に、

ものすごい声出して倒れよった。

 

駆けつけた時には白目むいて、

虫の息だった」

 

Cが死んだのに、

 

そんな言い方ないだろうと思って、

ちょっと口答えしそうになりましたが、

 

神主さんは真剣な目で、

私たちの方を見ていました。

 

「ええか、

Aはもうおらんと思え。

 

Cのことも絶対今から忘れろ。

 

アレは目が見えんけん。

 

自分の事を知らん奴のところには

憑きには来ん。

 

アレのことを覚えとる奴がおったら、

何年かかってもアレはそいつのところに来る。

 

来たら憑かれて死ぬんぞ。

 

それと、

後ろ髪は伸ばすなよ。

 

もしアレに会って逃げた時、

アレは最初に髪を引っ張るけんな」

 

それだけ聞かされると、

私たちは重い気持ちで進路室を出ました。

 

あの時、神主さんは私の伸ばしていた

後ろ毛をハサミで切ったのです。

 

何かのまじない程度に思っていましたが、

まじないどころではありませんでした。

 

帰るその足で床屋に行き、

丸坊主にしてもらいました。

 

卒業して家業を継ぐという話は、

その時から諦めなければいけませんでした。

 

その後、

私たちはバラバラの県で進路につき、

 

絶対に顔を合わせないようにしよう、

 

もし会っても他人のふりをすることに

しなければなりませんでした。

 

私は1年遅れて隣県の高校に入ることができ、

過去を忘れて自分の生活に没頭しました。

 

髪は短く刈りました。

 

しかし、

 

床屋で「坊主」を頼むたび、

私は神主さんの話を思い出していました。

 

今日来るか、

明日来るかと思いながら、

 

長い3年が過ぎました。

 

その後、さらに浪人して、

他県の大学に入ることが出来ました。

 

しかし、

 

少し気を許して盆に帰省したのが

いけませんでした。

 

もともと私はお爺ちゃん子で、

祖父はその年の正月に亡くなっていました。

 

急のことだったのですが、

 

せめて初盆くらいは帰って来んかと、

電話で両親も言っていました。

 

それがいけませんでした。

 

駅の売店で新聞を買おうと寄ったのですが、

中学時代の彼女が売り子でした。

 

彼女は、私を見るなり

ボロボロと泣き出して、

 

BとDがそれぞれ死んだことを

捲くし立てました。

 

Bは卒業後まもなく、

 

下宿の自室に閉じこもって

首を括ったそうです。

 

部屋は雨戸とカーテンが閉められ、

部屋中の扉という扉を封印し、

 

さらに自分の髪の毛をその上から一本一本、

几帳面に貼り付けていたということでした。

 

(金属用のロウ)で自分の耳と瞼に

封をしようとした痕があったが、

 

最後までそれをやらずに自害した

という話でした。

 

Dは、17の夏に四国まで

逃げたそうですが、

 

松山の近郊の町で、

 

パンツ一枚でケタケタ笑いながら

歩いているのを見つかったそうです。

 

Dの後頭部は烏がむしったように、

髪の毛が抜かれていました。

 

Dの瞼は閉じるのではなく、

絶対に閉じないようにと、

 

自らナイフで切り取ろうとした

痕があったそうです。

 

この時ほど中学時代の人間関係を

呪ったことはありません。

 

BとDの末路など、

今の私にはどうでもいい話でした。

 

つまり、

 

アレを覚えているのは

私一人しか残っていない、

 

と気づかされてしまったのです。

 

胸が強く締め付けられるような感覚で

家に帰り着くと、

 

誰もいませんでした。

 

後で知ったことですが、

 

私の地方は忌廻しと云って、

特に強い忌み事のあった家は、

 

本家であっても初盆を奈良の寺で行う

という風習があったのです。

 

私は連れて来られたのでした。

 

それから3日、

私は39度以上の熱が続き、

 

実家で寝込まなければなりませんでした。

 

この時、

私は死を覚悟しました。

 

仏間に布団を敷き、

なるだけ白い服を着て、

 

水を飲みながら寝ていました。

 

3日目の夜明けの晩、

夢にAが立ちました。

 

Aは骨と皮の姿になり、

黒ずんでいて白目でした。

 

「お前一人やな」

 

「うん」

 

「お前もこっち来てくれよ」

 

「いやじゃ」

 

「Cが会いたがっとるぞ」

 

「いやじゃ」

 

「おまえ来んと、

Cは毎日リンチじゃ。

 

逆さ吊りで口に靴下詰めて

蹴り上げられよるぞ。

 

かわいそうやろ」

 

「うそつけ。

地獄がそんな甘いわけないやろ」

 

「ははは、地獄か、

地獄ちゅうのはなぁ」

 

そこで目を覚ましました。

 

自分の息の音で、

喉がヒイヒイ音を立てていました。

 

枕元を見ると、

祖父の位牌にヒビが入っていました。

 

私は考えました。

 

アレの話を私と同じように

多くの人に話せば、

 

アレが私を探し当て、

私が憑依される確率は下がるのではないか。

 

ここまでの長文たいへん失礼しましたが、

 

大雑把な書き方では読んだ方の記憶に

残らないと思ったのです。

 

読んだ方には申し訳ないのですが、

犬に噛まれたとでも思ってください。

 

ご自分の生存確率を上げたければ、

 

この話を少しでも多くの方へ

伝えることをおすすめします。

 

(終)

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