ヒサルキの真相について 1/3

人食い

 

こんな所(某ネット掲示板)

ヒサユキの名前に会うとは、

 

実際のところ驚いている。

 

彼女の事について真相を伝えるのは

私としても心苦しいが、

 

だがこの様に詮索を続けさせるのは、

(むし)ろ彼女にとっても辛いことだろう。

 

そのため、

ここで私は真相を明かそうと考えるが、

 

その前にこれを読む者には

一つの心構えを御願いしたい。

 

すなわち、

 

彼女については、

その一切を忘れてしまうこと。

 

これは、

貴方と彼女のためである。

 

では、始めよう。

 

話は昭和十九年に遡る。

 

ここは若向きの掲示板であるだろうから、

 

昭和年号で表記しても、

余り感興は沸かないかも知れない。

 

※感興(かんきょう)

何かを見たり聞いたりして興味がわくこと。

 

ならば、

1944年としたらどうだろうか。

 

そう、日本が敗北する

一年前のことである。

 

戦火は日増しに激しくなり、

私の在籍していた帝国大学大学院でも、

 

文系ばかりか理系までも

学徒出陣を余儀なくされていた。

 

そんな頃の話である。

 

私は民俗学を専攻しており、

その研究主題は「鬼」であった。

 

有名な桃太郎の昔話に代表されるように、

鬼にまつわる話は枚挙に暇が無い。

 

※枚挙に暇が無い(まいきょにいとまがない)

たくさんありすぎて、いちいち数えきれない。

 

巷間に流布されている通説によれば、

彼ら鬼は日本に漂着した露西亜人である。

 

※露西亜人(ロシア人)

 

成る程、

 

赤ら顔や巨躯などは正に、

鬼の風情そのままであることだろう。

 

※巨躯(きょく)

並はずれて大きな体。巨体。

 

(しか)るに、

私がとった手法は、

 

日本の鬼と中国の鬼とを

比較検討することであった。

 

御存知の方も居るかも知れないが、

 

中国の鬼は、

日本で言うところの幽霊に相当する。

 

すなわち、

 

前者が物質的であるのに対して、

後者は霊気的存在であるのだ。

 

恐らく鬼が中国から日本へと流入する際に、

何等かの変容を遂げたものと私は考えていた。

 

さて、

ここで彼女について話さねばならない。

 

先述したように、

 

彼女についての一切を

忘れて頂かなくてはならないので、

 

その名前については伏せておくことにする。

 

ただ、彼女は日本を代表する

高名な生物学者の一人娘であった。

 

(恐らく、誰もが一度は教科書で

名前を見たことだろう)

 

そして、

 

彼女自身も帝国大学大学院で

生物学を専攻しており、

 

その研究主題は「身体改造」であった。

 

物資も兵員も不足する中で

敗勢を覆すために、

 

彼女は軍部の支援の元に、

 

兵員の身体そのものを改造する研究を

進めていたのである。

 

しかし、

その研究は失敗の連続であったらしい。

 

そんな時に、

私と彼女は出会うことになる。

 

鬼に対する私の解釈に

彼女はひどく興味を持ってくれて、

 

私達は「鬼」を介して何度か

議論を交わすようになった。

 

そして、何時しか私達は惹かれ合い、

逢瀬と恋文を交わす仲となっていった。

 

※逢瀬(おうせ)

会う時。特に、愛し合う男女がひそかに会う機会。

 

そんな頃、

彼女について良からぬ噂を耳にした。

 

彼女の研究を支援しているのは、

 

軍部ではなく、

実は「組織」であるらしいのだ。

 

だが、「組織」については、

私もよく知らない。

 

聞くところによれば、

 

それを構成するのは軍部・財閥・皇族・

神道関係者・帝国大学の学者であり、

 

言わば天皇が傀儡としての

表の顔であるならば、

 

※傀儡(かいらい)

自分の意志や主義を表さず、他人の言いなりに動いて利用されている者。

 

「組織」は実権を握る、

裏の顔であるのだ。

 

このように書くと、

如何にも胡散臭いのであるが、

 

一説によれば、

 

松代大本営の造営も、

彼らによって立案実行されたものらしい。

 

※松代大本営(まつしろだいほんえい)

アジア・太平洋戦争末期の敗色濃厚だった当時に造られた、地下壕などの地下軍事施設群のことである。

 

或る日、私は冗談混じりに、

彼女にそれを問い質してみた。

 

彼女は肯定も否定もせず、

ただ笑っていた。

 

しかし、その次の日に、

 

私が所属する研究室の扉を

(たた)く者が居た。

 

軍服に身を包んだその将校は、

自分は冷泉中尉であると名乗った。

 

彼の話はこうである。

 

優秀な生物学者である彼女を中心に、

この度、新規研究計画を立ち上げたい。

 

ただ、

 

その研究内容は甚だ特殊であり、

かつ国家の存亡を左右するので、

 

諜報対策のために人里から離れた

特別な研究所を建造した。

 

そこで、

彼女と懇意にしている私も、

 

共にその研究所で働いては

もらえないものだろうか、と。

 

昨日の出来事とを合わせ考えるならば、

 

彼の話はひどく疑わしいもので

あるように思えた。

 

冷泉という名前は、

如何にも偽名のようであったし、

 

殊更(ことさら)に、

 

自分が軍部所属であると主張している

ようにも取れたからである。

 

私は「時間を頂きたい」と返すと、

その日は彼に御引取り願うことにした。

 

(続く)ヒサルキの真相について 2/3

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