家賃がたったの月々7千円なワケ 2/2

アパート 部屋

前回までの話はこちら

以下、大家さんの話。

 

今から6年前までは、このアパートも新築同様で住民も沢山いたんだ。

 

家賃も、他の普通のアパートとほとんど同じだった。

 

俺もアパートの大家っていう仕事に生き甲斐を感じていたし、自分なりに色々頑張っていたよ。

 

ある日、一人住民が引っ越して別のアパートに住む事になったもんで、部屋に一つ空きが出来た。

 

空きが出来てから数週間後に、その空き部屋に女が越してきた。

 

その女は異常なまでの動物愛好家で、アパートの部屋で猫やら犬は勿論、どこから拾ってきたのか、ウサギやタヌキなんかも飼っていた。

 

分かっていたら最初から住まわせなかったけど、ある日突然急に飼い始めてな。

 

俺も大家として最初のうちは注意したよ。

 

「ここで動物を飼ってもらっては困ります。どうしても飼うというなら出て行ってもらいますよ」ってね。

 

でもその女、俺が注意する度に「じゃあこの子達をどうすればいいんですか!捨てるんですか!?そんな事するくらいなら死んでやる!!」って怒鳴り散らしてね。

 

手に負えない訳よ。

 

当時の俺は甘かったせいもあって、隣の住民から苦情が出たら強制的に出て行ってもらおうとか考えていた。

 

まあ案の定、その女が越してきてから3週間と経たないうちに苦情が出てな。

 

あんだけ動物飼ってりゃ、まあ当たり前だ。

 

約3週間ももったのが逆にすごいよ。

 

で、すぐに出て行くよう説得に行ったよ。

 

今度はかなり厳しくな。

 

「出て行かない場合は法的手段を取らせてもらう」って。

 

そしたらその女、発狂してのたうち回ってね。

 

しばらくしたら静かになって、「分かりました」って言ったんだ。

 

「3日経っても出て行かない場合は、分かってるね」って念を押して、その日は女の部屋を後にした。

 

でも3日経っても女が出て行く様子が全く無い。

 

それでまた部屋に押しかけた。

 

でも鍵が掛かっていてドアが開かないから、合鍵で無理矢理に開けた。

 

そしたらどうなっていたと思う?

 

その女、部屋で首吊ってやがった。

 

あんだけ沢山いた動物も逃がしたのか知らないけど、キレイさっぱり居なくなっててね。

 

女の死体の足元に遺書みたいなのがあって、俺に対しての悪口やら、隣の住民の悪口やらが色々書いてあった。

 

まあすぐに警察に通報したよ。

 

大家として結構事情聴取されたけど、まあ死体を見れば自殺だって一目瞭然だわな。

 

女のこれまでの行動とかも細かく話して、警察も俺や隣の住民に同情していたな。

 

まあ特に大層な事も無く、キチ○イ女の自殺ってことで終わった。

 

大量の動物の行方については警察もちょっと調べたらしいけど、結局は分からんままでな。

 

君の話を聞いてようやく分かったよ。

 

まさか押し入れの床下だったとはね・・・。

 

警察もまさか床下に大量の動物が埋まってるなんて思わなかったのかな。

 

まあ実際、動物についてはどうでもいい感じだったし。

 

床板を張り替え前と後で全く同じ様にするなんて、あの女も手の込んだ事をするな。

 

それで、女が死んでから1週間後くらいに、アパートの住民全員から不思議な苦情があってな。

 

なんでも、冷蔵庫の中の食材なんかが、買って来たばかりの物まですぐに腐っちまうらしいんだ。

 

『原因不明』。

 

まさにこの言葉がお似合いだった。

 

そんな事が何度も続くもんだから、住民がどんどん出て行ってね。

 

最終的には住むもんが居なくなった。

 

住むもんが居ないって事は、アパートの経営が難しいって事。

 

家賃を相場よりも馬鹿みてえに安くして、なんとか経営を続けさせようとしたんだがな。

 

家賃に目がくらんで来る奴は沢山いたが、みんな2週間と経たないうちに出て行きやがる。

 

みんな出て行く前に言うセリフは、「腐る」「カビが・・・」、これがほとんどだったね。

 

そう、今の君みたいにな。

 

ちなみに余談だが、君が住んでいたのはその女が自殺した部屋だよ。

 

まあそれで、いくら安くしても出て行かれる。

 

そのうち本気で生活が苦しくなって、アパートの大家以外に仕事を探さないといけなくなった。

 

なんとか職探しして、今はパチンコ屋の正社員さ。

 

給料もそこそこ良い。

 

現役で大家していた頃よりは少ないけど、充分に暮らしていける。

 

ま、そんな感じだな。

 

ただ、アパートに人が全然住まなくなってから、変な植物が沢山生えやがって、今じゃ全体を覆い尽くしている。

 

これも、あの女や動物達の怨念かも知れん。

 

それにしても、やっぱり人の死体ってのは恐ろしいもんでな。

 

あの女の死に顔、忘れられんのよ。

 

舌をだらっと突き出して、目が完全に白目剥いててな。

 

トラウマもんだぜ、ありゃぁ。

 

まあ、結局は自業自得だけどな。

 

そう言い終えて、大家さんは笑った。

 

俺は大家さんに、「まだアパートの大家を続けるんですか?」と訊いた。

 

「多分もう君が最後の住民だろうし、辞めようと思う。何より儲からんしな」

 

そう言って大家さんはまた笑った。

 

そして最初に会った時と同じ様に、うちわを扇ぎながら奥へ下がっていった。

 

俺はその後、初めに紹介された家賃3万2千円のアパートに住む事になった。

 

少し苦しかったが・・・。

 

20歳になる頃には正社員にもなり、安定した収入が得られるようになった。

 

現在24歳。

 

まだ家族は居ないが、頑張って生きている。

 

仕事の帰り、通勤電車に揺られながら時折大家さんの事が頭をよぎる。

 

あの出来事から6年経った今でも、喉に刺さった骨のように、折に触れてあの記憶が蘇る。

 

笑いながら奥へ下がっていった大家さんの後ろ姿。

 

その背中に寄り添うようにして、しがみ付いている女。

 

大家さんが後ろを向く時、確かに目が合った。

 

その目は冷たく、無機質に笑っていた。

 

(終)

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